スイスのLimmaTech Biologics AGは、黄色ブドウ球菌感染症を予防するためのワクチン候補「LBT-SA7」が、米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を受けたことを発表しました。
目次
ワクチン候補「LBT-SA7」の作用機序
LBT-SA7は、黄色ブドウ球菌が感染時に分泌する毒素(トキシン)を標的としています。この毒素は、感染症状の悪化や組織へのダメージを引き起こしますが、ワクチンは以下メカニズムでそれを防ぎます。
- 毒素の無毒化
ワクチンには、黄色ブドウ球菌が産生するトキシンを弱毒化した「トキソイド」が含まれています。このトキソイドは、体内で免疫系を刺激し、毒素を中和する抗体を生成します。 - 毒素の効果を抑制
生成された抗体は、感染時に分泌されるトキシンに結合し、その活性を阻害。これにより、トキシンが引き起こす炎症や組織破壊が防がれ、感染の進行が抑えられます。 - 再感染の予防
免疫記憶が形成されることで、将来的な感染時にも迅速に抗体が産生され、SSTI(皮膚・軟部組織感染症)の再発を予防します。
この作用機序により、LBT-SA7は、現在の抗生物質治療では十分に対応できない抗生物質耐性の黄色ブドウ球菌感染症にも有効性を発揮する可能性があります。
臨床試験と今後の展望
- 第1相試験:米国で進行中。130名の健康な成人(18~50歳)を対象に、安全性と免疫応答を評価。結果は2025年後半に公表予定。
- この試験では、トキソイドに対する抗体の産生能力と安全性が確認される予定です。
Dr. Franz-Werner Haas氏(CEO)は、「LBT-SA7は、毒素を無力化するという新しいアプローチで、抗生物質に依存しない治療法を提供します」と述べ、LBT-SA7が持つ予防効果に大きな期待を寄せています。