非小細胞肺がん(NSCLC)の新しい治療選択肢として期待される抗がん剤、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)の第3相臨床試験が第一三共により始まりました。
本剤は、がん細胞に特異的に作用する抗体薬物複合体(ADC)で、がん細胞の成長を抑えながら副作用を軽減する設計がされています。
目次
Dato-DXd 第3相臨床試験の概要
第一三共は非小細胞肺がんの治療に特化した3つの臨床試験(TROPION-Lung10, TROPION-Lung14, TROPION-Lung15)を開始しました。各試験は、日本を含むアジア、欧米を含む世界規模で実施され、以下のように進行しています。
- TROPION-Lung10試験:
遺伝子変異がないPD-L1高発現の患者を対象とし、Dato-DXdとRilvegostomig(PD-1/TIGITバイスペシフィック抗体)との併用療法と、標準治療であるペムブロリズマブ単剤療法を比較。主な評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)です。 - TROPION-Lung14試験:
EGFR変異を有する患者を対象に、Dato-DXdとオシメルチニブ(EGFR阻害剤)との併用療法の有効性を検証。主要評価項目はPFSです。 - TROPION-Lung15試験:
オシメルチニブ治療歴のある患者に対し、Dato-DXd単独および併用療法の効果を比較。二剤併用化学療法と比較しPFSを評価します。
Dato-DXdの注目点:TROP2を標的とした治療法
Dato-DXdは、TROP2というタンパク質に特異的に結合し、がん細胞内に薬剤を直接届けることで副作用を軽減するよう設計されています。現在、TROP2を標的とする治療法は承認されておらず、非小細胞肺がん治療において新たな突破口として注目されています。
非小細胞肺がん治療における意義
2022年には世界で約250万人が新たに肺がんと診断されています。中でも非小細胞肺がんは肺がん全体の85%を占め、その多くが非扁平上皮がんとされています。現在の標準治療法には限界があり、新たな治療選択肢が求められています。Dato-DXdは、既存治療に耐性ができた患者に対して新たな希望として期待されています。
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参考情報
ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象とした3つの第3相臨床試験の開始について:2024/10/31アクセス