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【BridgeBio】Canavan病遺伝子治療BBP-812の第1/2相臨床試験で良好な結果を発表

BridgeBio Pharmaは、致死性の神経発達障害であるCanavan病の治療法として開発中の遺伝子治療BBP-812の第1/2相臨床試験「CANaspire」から、ポジティブデータを発表しました。

この治療はアデノ随伴ウイルス9型(AAV9)を用いた遺伝子治療で、対象は小児患者です。今回の試験結果は、2024年の欧州遺伝子・細胞治療学会(ESGCT)で発表され、臨床的に重要な改善が観察されたと報告されています。

目次

試験結果の詳細

CANaspire試験において、低用量および高用量のBBP-812を投与された患者11名のデータが分析され、以下のような主な成果が得られました。

  • N-アセチルアスパラギン酸(NAA)の低減
  • 低用量群:治療から12カ月後、尿中NAAレベルが平均64%(±14%)低下し、軽度のCanavan病患者に見られる水準まで減少しました。
  • 高用量群:治療後3カ月で尿中NAAが平均73%(±13%)減少し、さらなる改善が期待されています。
  • 脳脊髄液(CSF):低用量群で平均70%(±10%)の減少が確認されました。
  • 長期維持効果:最初に投与された患者において、尿中NAAレベルの低下が約3年間にわたり維持されています。

運動機能と発達段階の改善

BBP-812を投与された患者の多くが、Gross Motor Function Measure(GMFM)-88やHammersmith Infant Neurological Examination(HINE)-2といった評価基準に基づき、以下のような発達段階の進展を見せました。

自力で座る、歩行の試みを行う、あるいは歩行が可能になるなど、Canavan病の自然経過と比較して大幅な改善。

低用量群では、12カ月後の運動機能と発達段階の達成において統計的に有意な改善が観察されました。なお、高用量群のデータはまだ収集中です。

髄鞘形成の改善

治療を受けた患者の多くにおいて、T2強調MRIで髄鞘形成の進展が確認されました。髄鞘は神経の電気信号伝達に重要な役割を果たすため、この改善は神経機能の回復に繋がる可能性があるとされています。

安全性と忍容性

BBP-812は全般的に良好な忍容性を示し、他のAAV9ベクターを用いた遺伝子治療と同様の安全性が確認されました。重大な有害事象は報告されておらず、継続的に良好な安全プロファイルが維持されています。

規制上の特別指定

BBP-812は、米国食品医薬品局(FDA)から以下のような指定を受けています。

  • 再生医療先端治療(RMAT)指定
  • 希少小児疾患(RPDD)指定
  • 希少疾病医薬品(Orphan Drug)指定
  • 迅速承認(Fast Track)指定

Canavan病について

Canavan病は、遺伝子の異常によりアスパルテアシラーゼという酵素の働きが低下し、N-アセチルアスパラギン酸(NAA)が脳内に蓄積することで神経細胞に毒性が生じる疾患です。通常、乳幼児期に発症し、重度の運動障害や発達の遅れが見られ、多くの患者が若年期に死亡します。現状では有効な治療法がなく、症状を緩和するサポート療法が行われるに留まっています。

今後の展望

今回の試験結果は、BBP-812がCanavan病の初の治療選択肢として期待されるもので、特に運動機能の回復とNAAレベルの低減において有望な結果を示しました。さらにデータの収集が進めば、より明確な治療効果の評価が可能となり、承認に向けたプロセスが加速する可能性があります。

参考情報

https://investor.bridgebio.com/news-releases/news-release-details/bridgebio-shares-positive-data-high-dose-cohort-phase-12

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