Pfizerは、BRAF V600E変異を持つ転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした第2相PHAROS試験において、BRAFTOVI(エンコラフェニブ)とMEKTOVI(ビニメチニブ)の併用療法が長期にわたる有効性を示したと発表しました。
約3年のフォローアップ後、治療初回患者の客観的奏効率(ORR)は75%、無増悪生存期間(PFS)の中央値は30.2ヵ月(95%信頼区間[CI]: 15.7-NE)に達しました。既治療患者においてもPFSの中央値は9.3ヵ月(95% CI: 6.2-24.8)と有効性が確認されました。
作用機序
BRAFTOVI(エンコラフェニブ)は、BRAF V600E変異を標的とするBRAF阻害剤です。BRAF遺伝子は細胞増殖を制御するシグナル伝達経路の一部であり、特に「MAPキナーゼ経路」に関与しています。BRAF V600E変異は、このシグナル伝達を異常に活性化し、がん細胞の異常増殖を促進します。BRAFTOVIはこの異常活性化されたBRAFを阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。
MEKTOVI(ビニメチニブ)は、同じMAPキナーゼ経路の下流にあるMEKという酵素を阻害します。BRAFが阻害された後も、MEKが活性化されていればシグナル伝達は継続してしまいます。MEKTOVIは、このMEKを抑制することで、MAPキナーゼ経路全体をブロックし、がん細胞の増殖をさらに効果的に抑える役割を果たします。
この2剤の併用により、MAPキナーゼ経路を上流と下流の両方で抑制し、がん細胞の増殖を二重に制御することができます。特に、BRAF V600E変異を持つ患者では、この併用療法が効果的であり、腫瘍縮小や病状進行の遅延が確認されています。
試験結果の詳細
- 治療初回患者のORR:75%
- 既治療患者のORR:46%
- 治療初回患者のPFS中央値:30.2ヵ月(95% CI: 15.7-NE)
- 既治療患者のPFS中央値:9.3ヵ月(95% CI: 6.2-24.8)
- 治療初回患者のOS中央値:未到達(95% CI: 31.3-NE)
- 既治療患者のOS中央値:22.7ヵ月(95% CI: 14.1-32.2)
安全性
- 治療関連の有害事象(AEs)による減量率:26%
- 治療中止率:16%
- 主な有害事象:吐き気、下痢、疲労
- 新たな安全性懸念は報告されず
今回の結果は、BRAFTOVI + MEKTOVI併用療法がBRAF V600E変異を持つ転移性非小細胞肺がん患者に対する標準治療の選択肢として有望であることを示しており、長期的な生存改善が期待されています。