AstraZenecaと第一三共が共同開発するEnhertu(トラスツズマブ デルクステカン)が、HER2陽性転移性乳がんと脳転移を有する患者において大きな臨床効果を示しました。
第IIIb/IV相のDESTINY-Breast12試験の結果、脳転移がある患者での1年後の無増悪生存率(PFS)は61.6%に達し、安定した脳転移患者では62.9%、活動中の脳転移患者でも59.6%のPFSが確認されました。
また、脳中枢神経系(CNS)における1年後のPFSは、全体で58.9%となり、活動中の脳転移患者では60.1%、安定した脳転移患者では57.8%という結果でした。
目次
試験結果の詳細
- 脳転移が安定している患者の1年後PFS: 62.9%(CNS PFS: 57.8%)
- 活動中の脳転移患者の1年後PFS: 59.6%(CNS PFS: 60.1%)
- 脳転移のない患者のORR: 62.7%(完全奏効[CR] 23例、部分奏効[PR] 128例)
- 脳転移がある患者のPFS中央値: 17.3ヵ月(95% CI: 13.7-22.1)
さらに、脳転移がなく、基準時に測定可能な病変を持たない患者においても、62.7%の客観的奏効率(ORR)が確認され、臨床的効果が認められました。
安全性と副作用
試験におけるEnhertuの安全性プロファイルは、過去の臨床試験と一貫しており、新たな安全性の懸念は見られませんでした。
特に間質性肺疾患(ILD)や肺炎の発症率は、脳転移の有無にかかわらず確認されましたが、主に軽度のものでした。脳転移のある患者では、16.0%がILDや肺炎を発症し、うちGrade 5(重篤な事例)は6例(2.3%)発生しています。