すでにニュースを見た方も多いのではないでしょうか?
長生堂製薬は5月24日、安定性試験結果の処理に不適切な取り扱いがあったとし、アズクレニンS配合顆粒など8品目について自主回収(クラスⅡ)すると発表した。当該製品の安定性モニタリングにおいて、定量試験が承認規格に適合しない結果が得られたロットが確認されたとしており、同日から当該ロットの自主回収を開始した。今回の事態を受け同社は、外部の弁護士および医薬品GMPの専門家を加えた「特別調査委員会」を立ち上げたことを発表した。
不適切処理は31品目に上りますが、使用期限が切れているものも多く
実際の回収は10製品弱になります。
最近の後発品回収は複数企業にわたることが多いですが、
今回も長生堂だけではなく、日本ジェネリックを中心とした他社も巻き込む大回収となっています。
結果、全部で6社が関わるため、回収品も複雑で、頭の整理が難しくなっています。
混乱している人、あえて後回しにした人、そっとニュースを閉じた人多いのではないでしょうか?
と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長生堂製薬と日本ジェネリックの関係
回収品と回収理由の整理
チクチクの目から見た懸念と考察
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長生堂製薬と日本ジェネリックの関係
まずは長生堂製薬と日本ジェネリックの関係です。
お恥ずかしい話ですが、私自身よくわかっていませんでした。
調べてみるとなんと言うことはありません。
両方とも、かの有名な
調剤薬局『日本調剤』の子会社でした。
日本ジェネリックは2005年に日本調剤100%出資の子会社として誕生しています。
そして長生堂製薬は2013年に日本調剤に買収されることで子会社となっています。
それにより高域販路をもつ日本ジェネリックは長生堂製薬の販売部門を担当しつつ、
自社単独製品も販売するようになりました。
超老舗医薬品メーカーでした。
回収の理由と会社を整理
続いて回収理由と会社を整理していきます。
ちなみに全てクラスⅡの自主回収となります。
クラスI:クラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となりうる状況をいう。
クラスII:クラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性があるか又は重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。
クラスIII:クラスIIIとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。
製造販売:長生堂製薬&販売元:日本ジェネリック回収と理由
まずは本丸の製造販売、長生堂、販売が日本ジェネリックの製品です。
これは8製品あります。
製品名 | 回収理由 |
アズクレニン S 配合顆粒 バラ1㎏ | 定量試験未適合 |
スプラタストトシル酸塩カプセル 50mg「JG」PTP100 カプセル | 定量試験未適合 |
ボグリボース錠 0.2mg「JG」PTP 100 錠、PTP 1000 錠 | 定量試験未適合 |
ボグリボース錠 0.3mg「JG」PTP 100 錠、PTP 1000 錠 | 定量試験未適合 |
ロラタジン DS1%「JG」0.5g×120 包 | 定量試験未適合 |
ニソルジピン錠 10mg「JG」PTP 100 錠 | 溶出試験未適合 |
メトプロロール酒石酸塩錠 40mg「JG」PTP 100 錠 | 溶出試験未適合 |
ロキシスロマイシン錠 150mg「JG」PTP 100 錠、PTP 500 錠 | 溶出試験未適合 |
うち5製品が定量試験未適合、3製品が溶出試験未適合です。
過去2社の回収問題で麻痺していますが、8製品はかなり多い回収です。
…昨今の事件で感覚が麻痺してるんだよなぁ
長生堂が製造で複数社に波及したアロチノロール塩酸塩錠5mg
アロチノロールは6社共同開発で長生堂製薬が製造をになっていた様で
日本ジェネリックだけでなく東和薬品、武田テバ、沢井製薬、日医工品に波及しています。
なお原因は溶出性試験未適合です。
出荷時期が微妙に違って現場を混乱させそうね。
製品名 | 出荷時期 |
アロチノロール塩酸塩錠5mg「トーワ」 PTP100錠 | 出荷時期:2018年10月11日以降 |
アロチノロール塩酸塩錠5mg「JG」PTP包装 100錠 | 出荷時期:2018年11月2日以降 |
アロチノロール塩酸塩錠5mg「JG」PTP包装 500錠 | 出荷時期:2019年1月10日以降 |
アロチノロール塩酸塩錠5mg「テバ」PTP100 | 出荷時期:2019年2月13日以降 |
アロチノロール塩酸塩錠5mg「サワイ」 | 出荷時期:2018年9月10日以降 |
アロチノロール塩酸塩錠5mg「日医工」PTP100 | 出荷時期:2018年以降 |
小林化工の時だけじゃなく
今回も巻き込まれたんですか…
この1年間後発品会社の不祥事
日医工の自主回収
小林化工の睡眠薬混入
長生堂の自主回収(NEW)日医工がすごいのは
3事件、全てに関わってるんですよね。自社は当然として、
小林化工では子会社のエルメッドが小林化工に製造委託
長生堂ではアロチノロール製造委託少し気の毒🥺🥺🥺#日医工
— チクチク@お薬ブログ (@mrnetinfo) May 27, 2021
日本ジェネリック回収(長生堂は関係ない)
長生堂製薬の自主回収が取り上げられていますが、
実はその影で日本ジェネリックも自主回収を行っています。
こちらも同じくクラスⅡの自主回収です。
ウルソデオキシコール酸錠100mg「JG」 | 製造時に人毛が混入 |
アリピプラゾール錠 3mg「JG」 | 純度試験(類縁物質)未適合 |
人毛が混入!!!
このたび、ある医療機関にて、本製品への繊維状異物の混入が発見されました。状態としては、錠剤 内部へ打ち込まれており、製造起因であることが明らかな状況でした。さらに、分析の専門機関にて異 物の鑑定を実施したところ、人毛である可能性が高いと推定されました
コレって何気に結構嫌だし、
営業の現場で、みたことがない気がします…
製造部門の方がコメントくれました!!
チクチクさんのいつも素早いまとめに関心します
ブログ内で言及されている「人毛の混入」についてですが、結論から言うと苦情として「人毛」が報告されることは非常に稀です
理由は
①体毛の混入は工程で最も気をつけている
②混入しても検査工程ではじかれる
③出荷しても現場で気付かれにくい
→続 https://t.co/MQWNk7xyu9— すん@製薬工場勤務 (@shin_gmp) May 27, 2021
ほぼゼロに等しい異常事態ってことなんだよね…
チクチクの目から見た考察と今後予想
おそらく多くの方が気にしているのが、
日医工や小林化工みたいに追加でダラダラと回収が起こるか否かって点ですよね。
日医工終わったばかりよ?
これに関してはポイントは2つあるのかなと考えています。
一つ目は徳島県の調査です。
徳島市内の3つの工場に県が立ち入り検査を行い、
すべての品目について
品質管理などに問題がなかったかチェックすることが決まっています。
チェックの進捗次第では、製造が間に合わなくなり欠品というストーリーは十二分に考えられます。
もう一つはちょっとポジティブにとらえているんですが、
期限が切れた過去の商品まで自社チェックが済んでいる点です。
冒頭で紹介した通り本来の違反品は31品目ありましたが、
20品目近くは使用期限が切れており回収対象となっていません。
つまり、自社点検の段階でかなり前の期間まで、さかのぼってチェックしていることが見て取れます。
日医工の時はその品目の多さから、
チェックが後追いになったため、だらだらと自主回収が続きました。
しかし、今回は実はほとんどの商品のチェックが済んでから公表したのではないか?とポジティブに受け止めています。
その場合は、長期的に継続する自主回収にはならないんじゃないかと考えます。
なので、自主回収品はここまで!!(少量の回収はあるかもしれませんが)
でも県の点検と業務停止命令によって製造が滞り、
欠品に突入すると言うストーリーかなぁと現状では予想しています。
可能ならば切り替えた方が良さそうではあります。
追記
悲劇が当たりました…
残念ながら欠品しています
5月27日田辺三菱にも波及
田辺三菱製薬は5月27日、長生堂製薬に製造委託しているアドビオール錠5mg(ブフェトロール塩酸塩錠)について、
定期安定性モニタリングの溶出試験で規格外の結果が得られたとして当該ロットの自主回収(クラスⅡ)を開始した。
当該ロットの含量は規格内であることから、有効性または安全性に影響する可能性は極めて低く、重篤な健康被害が発生する可能性はまずないものと考えられるとしている。
6月30日2製品3規格が欠品決定
製造の滞りにより2製品3規格が欠品になる模様です。
- アセトアミノフェン錠 200mg「JG」
- アセトアミノフェン300mg「JG」
- ミルタザピン錠 30mg「JG」
弊社販売のミルタザピン錠 30mg「JG」において、製造販売元長生堂製薬株式会社 で自己点検を行う中で製造・出荷に遅延が生じ、製品供給が滞ることから一時的な在庫薄が回避 できない状況となりました。
7月1日クラスⅡ自主回収
この度、標記製品につきまして、安定性モニタリングの使用期限 3 年時点において、
純度試験(類縁 物質)が規格外の結果となり、使用期限内に承認規格外となる可能性が否定できないことから、使用期 限内の全ロットを自主回収することといたしました。
7月6日に追加の出荷調整が発生
長生堂さんも日医工カスケード発動!
出荷調整▶休止が10品目追加…アシクロビル
アジスロマイシン
イトプリド
ジフェニドール
チアプリド
ドンペリドン
フルボキサミン
ベザフィブラート
ミルタザピン規格と詳細はコチラをご覧ください。https://t.co/Z5vrmdcSIp pic.twitter.com/busrJK7qLL
— チクチク@お薬ブログ (@mrnetinfo) July 6, 2021
32規格まで拡大しています!
7月16日:出荷調整または休止が10品目追加
現在、弊社販売の下記品目において、製造販売元長生堂製薬株式会社で自己点検を行 う中で製造・出荷の遅延が生じました。
この結果、32 品目において製品供給が滞ることから一時的 な在庫薄が回避できない状況となりました。
あらたに 10 品目が在庫薄となり、さらに流通での調整が 必要となりましたので、ご案内申し上げます。引用:製品供給に関するご案内(現在は削除されました)
順番に出荷調整になって欠品するよーって問題発覚時に申し上げていましたが、まさにその通りになってしまっています。
これで42品目まで拡大しました。日医工ほどは増えないでしょうが、さらに拡大する可能性は否定できません。
一定のリスク管理が重要な側面に入ったといえます。
- アンブロキソール塩酸塩錠15mg「JG」
- スピロノラクトン錠25mg「CH」
- ドキサゾシン錠2mg「JG」
- ドンペリドン錠10mg「JG」
- ハロペリドール錠1.5mg「JG」
- ベラプロストナトリウム錠20μg「JG」
- ポラプレジンクOD錠75mg「JG」
- メキシレチン塩酸塩カプセル100mg「JG」
- リスペリドン錠1mg「CH」
- ロペラミド塩酸塩カプセル1mg「JG」
07/19:トリアゾラム錠自主回収(クラス2)
この度、標記製品につきまして、本製品に使用した原薬の一部ロットについて、医薬品製造販売 承認書に記載がない原薬製造所で製造された原薬であることが判明いたしましたので、当該原薬 を使用して製造した対象ロットの製品を自主回収することといたしました。 回収対象製品に使用した原薬につきましては、製造販売承認書記載の原薬製造所から製造を 委託している製造所に納入した原薬の最終ロット番号について問い合わせがあり、確認したところ、 当該原薬製造所と製造委託先において相違がありました。また、製造委託先からも情報を得て、当 該原薬を調査した結果、2019年1月28日に納入された原薬は、製造販売承認書に記載がない原 薬製造所で製造された原薬であることが判明し、当該原薬を使用して製造した対象ロットの製品を 自主回収させていただきたく、ここに慎んでお知らせ申し上げます。
07/27:点検による出荷停止
製造所(長生堂製薬株式会社)での自己点検を行うなかで
製造・出荷 に遅延が生じ、供給が滞る状況となりました。引用:お知らせ文書
07/30:異物混入による販売一時停止
製造工程において紙片等の異物混入が発見引用:お知らせ文書
このままフェードアウトかな?
08/17:18製品の出荷調整
日本ジェネリックは8月17日、製造販売元の長生堂製薬で自己点検を行った結果、新たに18製品について出荷調整が発生すると公表した。これにより出荷調整品目は64製品に拡がった。
引用:日本ジェネリック 長生堂製薬の自己点検で18製品を出荷調整の対象に追加 合計64製品に拡大
09/03:乾燥工程と粉砕工程の不備による自主回収(クラスⅡ)
- エナラプリルマレイン酸塩錠2.5mg/5mg「JG」
- アセトアミノフェン錠200mg/300mg「JG」
- アイスフラット懸濁用配合顆粒
回収理由
この度、標記製品(2.5mg 及び 5mg の 2 規格)につきまして、製造販売承認書に規定された乾燥減量 規格を逸脱する追加乾燥を行い、かつ 2.5mg 製剤に含まれる色素(黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄) の粉砕工程において添加する乳糖水和物の量が承認書に規定された量より増量されているため、使用 期限内の全ロットを自主回収(クラス II)することといたしました。
引用:エナラプリルマレイン酸塩錠2.5mg/5mg「JG」 自主回収(クラスII)に関するお知らせ
標記製品(200mg 及び 300mg の 2 規格)につきまして、製造販売承認書の記載と異なる製造方法(香料の粉砕方法)を行っていたことが判明したため、使用期限内の全ロットを自主回収することと いたしました。
引用:アセトアミノフェン錠200mg/300mg「JG」 自主回収(クラスII)に関するお知らせ
本剤の造粒工程において承認書に記載のない乾燥工程を実 施していたことが判明したため、使用期限内の全ロットを自主回収
引用:アイスフラット懸濁用配合顆粒 自主回収(クラスII)に関するお知らせ
アセトアミノフェンに関しては同日に高田製薬、ニプロ、辰巳化学、長生堂製薬、日本ジェネリックの5社が回収しており、
ニプロが長生堂製薬が行った自己点検の中で発覚したと公表しているため、長生堂製薬が一括生産していたのでしょう。
アイスフラット、エナラプリルの製造販売元も長生堂であるため、
おそらくですが、今回の回収は
長生堂の乾燥&粉砕工程チームのミスが発覚したと予想できます。
09/24:長生堂に業務停止命令のニュース
前回の更新でも長生堂の不備を報じましたが、ついに徳島県が業務停止命令と出すようです。
ただ、さらに調整が業務停止命令が原因となって起こる可能性が出てきました…
長生堂に製造を頼っているものはなんとかならないんでしょうか…
長生堂製薬による後発医薬品の自主回収問題で、徳島県が医薬品医療機器等法に基づき同社に対し、近く業務停止命令の行政処分を出すことで最終調整を進めていることが関係者への取材で分かった。
引用:日刊薬業
まとめ
- 長生堂製薬と日本ジェネリックの関係
- 回収品と回収理由の整理
- チクチクの目から見た懸念と考察
この3点に絞って紹介させていただきました!
これからどのようになっていくのか注意深く見守っていきます。