医薬品の特例承認の解説。なぜアビガンは特例承認されないのか。

もくじ

 はじめに

先日こんなツイートをしました。

これ見ればこの記事の内容は大体概略は解ってしまいます(笑)。

それなりに反響をいただいたのでもう少し詳しく紹介します。

特例承認って何?

医薬品の特例承認は、

必要かつ海外で承認されている医薬品を書類作成等の手間を省きスピーディに承認するためのシステムです。

法律でも定められていまして、

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)第14条の3に記載されています。

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小難しく書いていますよね。正直よくわかりませんね。

今回はこの法律を簡潔に紹介します。

第14条の3
第14条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、次の各号のいずれにも該当する医薬品として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第2項、第5項、第6項及び第8項の規定にかかわらず、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その品目に係る同条の承認を与えられる。

まずはこの部分

これは簡単に言うと以下2つの条件両方を満たす場合、面倒な規定を飛ばして

薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、特別に承認を出す事ができると書いてあります。

ここで大事なのは2つの条件両方満たす必要があるということと

厚生労働大臣はあくまで薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて承認を出すと言う事です。

薬事・食品衛生審議会については、医薬品の有効性・安全性を評価し問題がないか判断している組織といった認識でとりあえずはOKです。

当然、薬事・食品衛生審議会がデータを見て、承認に足ると意見をあげなければ、厚生労働大臣は承認いたしません。

大臣の独断では、承認が困難なシステムになっています。

必要条件①

続いて特例承認に必要な2つの条件を確認します。

国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。

こちらも簡単に言うと

  1. 危険な疾病により国民の健康が脅かされる状況
  2. それを防ぐための薬であり、代わりになる方法がなく、その薬しか方法がない

COVID-19によって、国民の健康は脅かされている状況ですし、

感染拡大を防ぐための薬、方法等の有効な代替案は現状はありません。

つまり現在新型コロナウイルスを対象として海外で開発されている医薬品は1つ目の条件を満たします。

これは他の疾病でも同じでして、特例承認が必要とされるような緊急の状況では概ね満たしているケースが多いです。(新型インフルエンザ時の輸入ワクチン等)

まとめるとこの薬しか疾病解決ができない状況ということです。

必要条件②

問題は2つ目の条件です。今回のケースではこちらが問題になっています。

 その用途に関し、外国(医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で本邦と同等の水準にあると認められる医薬品の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列することが認められている医薬品であること。

こちらを簡単にいうと

  1. 外国で販売されている事
  2. その国が日本と同レベルの承認制度を有していること(例:米国)

つまり、

ちゃんとした承認制度のある外国で、該当の適応症で販売されている必要があります。

既に外国で売っていることが大事なんだね。

外国で承認されている薬はあるの?

2020/05/01現在、

日本と同等の承認システムを有する国で

新型コロナウイルスの承認をとり発売されている薬はありません。

中国とかタイで使われているじゃないか!!と言われますが、あれらは承認手続きに必要なデータを揃えて販売されている訳ではありません。

簡単に言えば、安全性も有効性もデータのない薬を博打で国民に広く使っています。

薬害リスクを完全無視した使い方ですし、当然、特例承認の条件に合致しません。

世界各国が承認を急いでいますが、

レムデシビルが1番最初に

プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験という、単独のデータでは最も信頼性の高い試験デザインでデータを出し、有効性を証明しました。

他薬もいくつかデータは出していますが、残念ながらランダム化されていない信頼性に欠ける試験デザインであるため、明確な効果を示したとは現状では言えません。

今後の治験結果が待たれます。

2020/05/01現在、有効と明らかなのはレムデシビルのみです。

また、レムデシビルは他の治験発表も近々控えており、それの成功をもって、アメリカで世界初の新型コロナウイルス治療薬として承認、発売される見込みです。(もちろん失敗する可能性もあります。)

※05/02 アメリカで緊急承認されました。

アメリカで発売されれば、

日本と同等の承認制度を示有した国で発売される事になりますので、

特例承認の条件を満たし、日本でも承認&発売されることになります。

最初に承認されるのは陰謀でも何でも無くて単に順番の問題です。

 最後の一文

厚生労働大臣は、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、前項の規定により第14条の承認を受けた者に対して、当該承認に係る品目について、当該品目の使用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生を厚生労働大臣に報告することその他の政令で定める措置を講ずる義務を課することができる。

最後にこちらの一文ですが、

これは特例承認を受けたメーカーは

適正使用のための情報伝達と副作用情報収集をしっかりやって厚生労働大臣に報告しなさいよといった、まぁ当たり前の内容が書かれています。

特例承認を受けたメーカーに対する義務を与えられますよというものです。

さまざまな手続きを無視した承認ですので

通常の承認を受けた薬剤と比べると安全性・有効性の担保は弱くなります。

そういった薬剤では早急な副作用情報の収集と評価、伝達が重要です。

ギリアドや富士フィルムは特例承認後は強くこの責任を負うことになります。

売りっぱなしはどんな薬でもいけません。

 まとめ

特例承認の内容に関してご理解いただけましたでしょうか。

レムデシビルが先に承認されるみこみというニュースが流れた際に

多くの陰謀論が登場してましたが、治験のスピードの問題でしかありません。

正直、この短い時間で数千例を超える治験を組むギリアドの経営手腕と能力がとんでもないです。

日本では国民皆保険が存在するため治療を受けられない人がほぼいません。

そのため、プラセボ対象の二重盲検ランダム化比較試験が組みにくいという背景もあります。しかしながら、こういう時の出足の速さとリスクを取っていく姿勢は外資系企業の見習うべきところではないでしょうか。

ファビピラビルに関しては今後の治験結果を待ちましょう。

※追記

5/7レムデシビル特例承認されました。

過去のケースから考えると

これから2-3週間後に発売されると想定されます。

治療薬の登場で早期にパンデミックが収束することを願っています。

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