こんにちは、皆さん!
今日は武田薬品のパイプラインから、
ちょっと気になる第3相臨床試験中の製品たちを
チクチク調査してみます。
さて、どんな新薬が登場するのか
ワクワクしますね!
武田薬品のパイプラインの中から
- 製品名がついていない
- 第3相臨床試験入りまたは申請済み
この条件に合致するものを調べ
作用機序を確認していきます!
製品名のない開発名のみの薬剤を一覧表にします!
製品名 | 作用機序 | 標的 | 適応症 |
---|---|---|---|
zasocitinib | TYK2阻害剤 | TYK2 | 乾癬性関節炎など |
rusfertide | 鉄調節ホルモンの調整 | ヘプシジン | 鉄過剰症 |
fazirsiran | RNAi治療薬 | Z-AAT | AAT欠損症 |
soticlestat | CH24H阻害剤 | CH24H | ドラベ症候群(DS), レノックス・ガストー症候群(LGS) |
maralixibat | IBAT阻害剤 | IBAT | アラジール症候群, 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症 |
TAK-880 | 免疫グロブリン補充療法 | 免疫グロブリン | 原発性免疫不全症候群・多巣性運動ニューロパチー |
TAK-881 | 免疫グロブリン補充療法 | 免疫グロブリン | 原発性免疫不全症 |
Prothromplex | 血液凝固因子補充療法 | 凝固因子 | 血液凝固障害、手術児のDOAC使用に伴う出血傾向の抑制 |
Glovenin-I | 免疫グロブリン補充療法 | 免疫グロブリン | 自己免疫性脳炎 |
それでは順番に見ていきましょう!
Zasocitinib(TAK-279)
Zasocitinib
(開発コード: NDI-034858、TAK-279)は、
元々はNimbus Therapeuticsによって開発された
経口投与可能な
選択的チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬です。
この薬剤は、
乾癬、乾癬性関節炎、
潰瘍性大腸炎、クローン病などに
対する効果が期待されています。
TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)
ファミリーに属する酵素です。
Zasocitinibはそれを特異的に阻害する薬です。
俗にいうJAK阻害薬です。
まず、
TYK2の役割について
紹介します。
TYK2は、
体内の特定のシグナル伝達経路において
重要な役割を果たしています。
具体的には、
- インターロイキン-12(IL-12)
- インターロイキン-23(IL-23)
- I型インターフェロン(IFNα/β)
といった炎症性サイトカインの
シグナル伝達に関与しています。
これらは免疫細胞の働きを活性化し、
炎症反応を引き起こす物質です。
サイトカインの
シグナル伝達経路が活性化されると、
体内で免疫反応が過剰に起こり、
自己免疫疾患とを引き起こすことがあります。
自己免疫疾患では、体の免疫システムが
自分自身の組織や臓器を攻撃してしまい、
炎症や損傷を引き起こします。
Zasocitinibは、
このTYK2を阻害することによって、
炎症性サイトカインの
シグナル伝達を抑制します。
結果として、過剰な免疫反応が調節され、
炎症が軽減されます。
類薬との違い
Zasocitinibは、
TYK2に対する高い選択性を持ちます。
プレスによると
JAK1の130万倍!
これは、他のJAK阻害剤と比較して、
特定のシグナル伝達経路に対する
作用がより限定されていることを意味します。
この高い選択性により、
望ましい治療効果を得る一方で、
他のJAK経路に関連する
副作用のリスクが低減されることが期待されます
Rusfertide
Rusfertideは
真性多血症(ポリサイトーシア・ヴェラ:PV)や
ベータサラセミアの治療に向けて開発中の
ヘプシジンミメティック(模倣薬)です。
ヘプシジンは、
鉄のホメオスタシスを制御する
天然のホルモンです。
Rusfertideはこれを模倣します。
Rusfertideはペプシジンを真似て、
フェロポルチンに結合し、
骨髄内の鉄の可用性を減少させ、
過剰な赤血球生成を減らす作用をもちます。
要は『体が鉄過剰に陥らないように作用する』
ペプシジンを模倣することで、
鉄を体が使えないようにして、
血の過剰産生をとめるって薬ですね!
詳細が気になる方は
こちらもご覧ください!
Fazirsiran
Fazirsiranは、
RNA干渉 (RNAi) 技術を用いた薬剤です。
α1-アンチトリプシン欠乏症 (AATD) に関連する
肝疾患の治療薬として開発されています。
RNA干渉に関しては
過去記事をご一読ください
α1-アンチトリプシン欠乏症とは?
AATDは、遺伝的に決定される病態で、
α1-アンチトリプシン (AAT) タンパク質の
不足によって引き起こされます。
このタンパク質は、
通常、肺や他の組織を保護する役割を果たします。
しかし、AATD患者では、
特にZ変異型AAT (Z-AAT) タンパク質が
肝臓に蓄積し、肝細胞に損傷を与えます。
これにより、肝線維症、肝硬変、
さらには肝細胞癌のリスクが増加します。
Fazirsiranの作用機序
Fazirsiranは
RNAi技術を用いてZ-AAT mRNAを標的とし
これを分解します。
- Z-AAT mRNAの認識と分解: Fazirsiranは、Z-AAT mRNAに結合し、これを特異的に分解します。これにより、異常なZ-AATタンパク質の生成が抑制されます。
- タンパク質蓄積の防止: Z-AATタンパク質の生成が減少することで、肝臓内の異常タンパク質の蓄積が防がれ、肝細胞への損傷が軽減されます。
- 肝機能の改善: 長期的には、肝線維症の進行を抑制し、肝硬変のリスクを低減します。
悪いタンパクを分解するわけね
Soticlestat
Soticlestatは、特に難治性てんかんである
ドラベ症候群や
レノックス・ガストー症候群に対する
新しい治療法として注目されていました。
しかし…
P3がネガティブな結果で
先行きが不透明な薬です!
ちょっと残念な状態ですが
一応作用機序を見ていきます!
Soticlestatは、
脳内の特定の酵素を阻害することで作用します。
24HCは、
脳内のNMDA受容体の活性を高める働きを持ち、
過剰な神経興奮性を引き起こします。
SoticlestatはCH24Hを阻害することで、
24HCの生成を減少させます。
結果、NMDA受容体の
過剰活性化を防ぎ、
神経の過剰な興奮
を抑える効果が
期待されていました。
P3ネガティブが悔やまれる…
Maralixibat
マラリキシバット(Maralixibat)
噛みそうな名前ですね!
本薬は、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)の
阻害剤として機能します。
IBATは腸内で胆汁酸の
再吸収を行う役割を果たしており、
マラリキシバットはこの過程を阻害することで
胆汁酸の再吸収を減少させます。
これにより、胆汁酸の体内プールが減少し、
胆汁酸の糞便排泄が増加します。
同系統の作用機序の薬に
エロビキシバット:グーフィス
がありますね!
作用はグーフィスと同じと思われますが、適応症は
- Alagille症候群(ALGS)
- 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)
と別の役割で使われます!
グーフィスの類薬ですので
副作用に下痢がありそうな気がしますね。
武田薬品は6月27日、経口投与可能な回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬・マラリキシバット塩化物(一般名、開発コード:TAK-625)について、アラジール症候群及び進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の治療薬として承認申請したと発表
2024年6月末に
申請されましたので、
25年には登場しそうです!
血漿分画製剤
血漿分画製剤はまとめて紹介します。
補充療法なので
作用機序は分かり切ってます故
TAK-880&TAK-881
両方とも免疫グロブリン製剤で
880は原発性免疫不全症候群・
多巣性運動ニューロパチーを、
881は免疫不全症ターゲットとして
開発されています。
TAK-880は、従来と同じく静脈内投与の薬です。
Gammagard S/Dと比べて
過敏症反応のリスクが少ないと期待されており
臨床試験が行われています。
TAK-881は、
880と別コンセプトの
類薬なので合わせて紹介します。
TAK-881は、皮下注射によって
より便利に投与できる
次世代の免疫グロブリン療法です。
浸透促進剤の
ボルヒアルロニダーゼ (rHuPH20)という
酵素によって吸収を高めます。
rHuPH20はヒアルロン酸を分解し、
IgGが皮下組織に広がりやすくすることで、
免疫グロブリンの
効果的な吸収と分布を促進します。
現在、武田薬品の自社品
HYQVIAと比較試験が進行しています!
rHuPH20は抗体製剤の
皮下注射では
よく使われる技術みたい
Prothromplex
プロトロンプレックスは、複数の凝固因子を含む
「プロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)」です。
具体的には、以下の4つの
主要な凝固因子が含まれています:
- 凝固因子II(プロトロンビン)
- 凝固因子VII
- 凝固因子IX
- 凝固因子X
⾎液凝固障害、⼿術時の直接経⼝抗凝固薬と(DOAC)使⽤に伴う出⾎傾向の抑制の予定で開発されています。
ビタミンK依存性の凝固因子を
包括的に投与してやろう!という製品ね
Glovenin-I
Glovenin-Iだけは調べた結果、
従来の乾燥グロベニン−1と比べて
どう違うのか確信が持てませんでした。
AutoimmuneEncephalitis (JP)と書かれているので
日本で自己免疫性脳炎の
追適を取るという意味と解釈しました。
まとめ
以上、武田薬品の第3相臨床試験中
および申請済みの製品について調査してみました。
これらの薬剤は、それぞれが異なる作用機序を持ち
多様な疾患に対する新しい治療法として期待されています。
個人的に勉強になるので、時間見つけて他社もまた調べていきます!