カブトガニの青い血の秘密:医薬品開発と笠岡市立カブトガニ博物館

カブトガニって知ってますでしょうか?
ポケモンのカブトのモデルにもなっている…
というかまんまの生物で、
実は日本にも生息している海生生物です。
瀬戸内と九州にいます。

こんな生き物です。

そしてこのカブトガニ…
じつは医薬品開発に多大な貢献をしています!

ウサギ、ラット、マウス、カニクイザルなどなど
医薬品開発には多くの生物が貢献していますが
カブトガニも負けていません!

そこで今回はそんなカブトガニの
医療への貢献を紹介するために

医療への貢献ライセート試薬
唯一の専門博物館の紹介

この2点をご紹介します。

チクチク

なおカニとは
名前がついていますが
カニよりクモとかサソリの方が
近い生き物です。

もくじ

エンドトキシン試験法のライセート試薬

ドチク子

エンドトキシン?
ライセート?

カブトガニの医療への貢献を語るためには
エンドトキシンの紹介を避けては通れないので
まずはここから紹介いたします。
(文系MRも多いですしね!)

エンドトキシンとは

エンドトキシンは細菌由来の毒素です。
正確にはグラム陰性菌細胞壁の成分なので、
エンドトキシンはグラム陰性菌が
死んで溶菌するときや
機械的に破壊されたとき、
菌が分裂するときなどに放出されます。

要は細胞壁がぶっ壊れると出てきます。

そしてこの細胞壁…人にとっては有害でして
人の体内に入ると熱発を起こしたり
ショック症状を引き起こします。

エンドトキシンの医薬品等への混入は
重大な副作用の原因となる可能性があるため、
医薬品や医療機器の製造においては
規制に基づいた厳重な管理が必要とされています。

エンドトキシン試験法とライセート試薬

そのエンドトキシンを
検出または定量する方法が
エンドトキシン試験法です。

われらが日本薬局方にも
掲載されています。
引用すると最初にこんな文が出てきます…

エンドトキシン試験法は,カブトガニ(Limulus polyphemus 又は Tachypleus tridentatus)の血球抽出成分より調製されたライセート試薬を用いて,グラム陰性菌由来のエンドトキシンを検出又は定量する方法である.

PMDA:エンドトキシン試験法
ドチク子

カブトガニの血球抽出成分より
調製されたライセート試薬!
カブトガニの血球抽出成分より
調製されたライセート試薬!!
カブトガニの血球抽出成分より
調製されたライセート試薬!!!

そう!検査法に使う試薬が
カブトガニの血液でできています!

発見の経緯はこんな感じです。

1968年(昭和43年)に、アメリカのジョンスホプキンス大学の医学者だったバング博士とレビン博士の2人は、アメリカカブトガニの血液からとりだした血球の成分によって、大腸菌などのばい菌があるとそれを短時間に、ゼラチン状に固めてしまうという大変な発見をしました。その後、いろいろと研究が続けられ、カブトガニの血液の中の血球の成分から作られた薬によって、病気の人を苦しめているばい菌を、いち早く発見して処置することができるようになりました。

笠岡市立カブトガニ博物館
バング博士&レビン博士

カブトガニの血で
バイキン固まるやんけ!
ウサギ使うより
めっちゃ早く
バイキン検査できる!

業社

ほなどんどん
血もらったろ!


ざっくりいうとこれが
カブトガニの人類への貢献の始まりです。

そして
血液を得るためには
ガッツリ献血します。

献血風景は結構ショッキングです。
心臓に直接針を刺して
血液が出なくなるまで抜くそうです。

興味ある方は以下ボタンをクリックください!

なお血が出なくなるまで
血液を抜いても多くのカブトガニは死にません。

組織の隙間に直接血液が流れ出す
『開放血管系』という
人類とは異なる循環気システムを持つため

血管内の血液を全て抜かれても
組織の隙間に多くの血液が残っていて
死にません。

まぁそれでも
体に負担が大きいのは事実みたいで
一定数(媒体によっては3割とも)
死ぬリスクはあります。
また繁殖行動にも
悪影響を与える様です。

余談ですが血液が青いのは
人間と違い鉄ではなく
銅を使っているからです。

鉄を使ったヘモグロビンではなく
銅を使ったヘモシアニンという
血球色素のため
酸素と結びついた血液は綺麗な青を発色します。
(酸素と結びつく前は乳白色です。)

青い血のお値段

そんな命を削って得られる
青い血ですが…
超高価です

カブトガニを捕獲し血液を採取する作業は時間がかかるが、得られるライセートは血液1ガロン(約3.8リットル)あたり6万ドル(約640万円)になる。

日本経済新聞:コロナワクチンでカブトガニ危機? 企業が頼る青い血

約16000ドル/リットル…
2023年6月のドル円レートで
約220万円ですw
採取できる血液量を調べると

この血液は1パイント(約453ミリリットル)あたり1万5000ドルもの価値がある。1パイントはメス1匹を生かしたまま採取できる最大量にあたり、オスではもっと少ない。

米東海岸でカブトガニの個体数調査

1匹あたり200-400mlというところでしょうか?
つまり1匹あたり
45-90万円の血液出してくれるわけですね。

すんごい金になる生き物ですわ…
日本でも養殖とか蓄養すればいいのに。

ライセート試薬の種類とカブトガニの分類

カブトガニは2属4種おりまして
アメリカカブトガニとそれ以外に分けられます。

なんでこんな事、書くかというと
それでライセート試薬の呼び名が
2種類に変わるからです。

  • Limulus属
  • Tachypleus属

この2属に分けられます。
それぞれ4種の学名を書くと

  • カブトガニ Tachypleus tridentatus
  • ミナミカブトガニTachypleus gigas
  • マルオカブトガニTachypleus rotundicauda
  • アメリカカブトガニLimulus polyphemus


ご覧の通り
Limulus属はアメリカカブトガニのみで
他は全てTachypleusです。

カブトガニ博物館で撮影:系統樹はこんな感じで分かれています。
かなり早い段階でアメリカカブトガニは種分化しているんですね!
生息域はこんな感じで分かれています。
なんでこんな地理的に隔絶された分かれ方してるんだろ?

この2属の頭文字をとって名前が変わっています。

Limulus属の血球抽出物から調製される
ライセート試薬をLimulus Amebocyte Lysate
通称LAL
Tachypleus属のの血球抽出物から調製される
ライセート試薬をTachypleus Amebocyte Lysate
通称TAL
と呼び分けられています。

なお余談ですが
ライセート試薬は元々は
リムルス試薬と呼ばれていました

Limulusはリムルスと呼びます。
日本でもそのまま製品名になっていますw

違うのは名前だけか?というと
そんなことはなく、
反応性にも違いがあるようで
こんな記載を見つけました。

LALがTALに 比較 して塩濃度 やpHに 影響 されやすい

エ ン ドトキ シ ンの血 中濃度測定法

ライセートの由来が異なるG-MKとG-MKⅡの2試薬の反応性は、接種した菌種によって異なることが確認された。また、その反応性の傾向はTALに強く反応するもの、逆に、LALに強く反応するものなど多様であり、これらの違いが臨床検体の相関に見られた2試薬間の測定値乖離の原因の1つになっていると考えられる。

2種の(1→3)-β-D-グルカン測定試薬の真菌に対する反応性の比較


歴史的なものか、
反応性が違うのでデータを揃えるためか
理由は定かではありませんが、日本においては
LALがメインになっている印象は受けます。

かなりお金になるし
日本でTAL工場あるのかな〜?
と思って結構探したのですが


調査能力不足で
工場を海外に持っている
以下2社を見つけるに留まりました。

  • 富士フイルム 和光純薬株式会社
  • 生化学工業株式会社
    (海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インク)

LALメインとなると
日本の製薬会社はアメリカカブトガニの献血で
成り立っていると言えそうです。

チクチク

中国とかだとTALが
メインになるのかな?

世界唯一の専門博物館:笠岡市立カブトガニ博物館

ここまでカブトガニの
医療貢献ライセート試薬について
紹介してきました!

読んでいてカブトガニへのリスペクトが
湧いてきた人もいるのではないでしょうか?

そんな貴方は日本人なら超幸運です!
日本には世界で唯一のカブトガニ専門博物館
笠岡市立カブトガニ博物館が存在します!

ツイッターアカウントもあります!

岡山の西側、距離的には福山からが近いです。

西日本の方はぜひ行ってみましょう!
ただ、簡単に行けない方も多いと思いますので
カブトガニリスペクトが溢れ出した私が
大枚叩いて行ってきました!

ここからはライセート試薬は
あまり関係ありません!

単なる博物館好き薬屋が
たくさん写真を撮ってきたので
ご覧ください。

外観はカブトガニの形をしています
(右側が甲羅で左側が尻尾)
門構え:後方に笠岡第一病院が見えます!
担当者はぜひ行きましょう!
飼育槽と繁殖槽:雨で濁っていてよく見えず…
笠岡第一病院が本当に近い
館内には川崎医科大学からの寄贈展示もありました!やはり医療との関わりが深い…
ただ寄贈品…カニなんですよねw
カブトガニはカニとは名前はつきますけど
クモとかサソリの近縁なんで名前以外関係ないのよねw
展示の際に学芸さんの苦悩がありそう..
展示されているカブトガニは本当に大きいです。
そして状態がいい!輝いている!
爪先とか見たことないですよねw
ちゃんとハサミっぽい
チクチク

薬の展示もあります!

  • リムルス
  • ファンギテック
  • エンドスペシー
  • エンドスペック

どれも希望納入価格
3〜6万円の高額商品です。

カブトガニの他にも
カブトガニと同時期に生きていた
古代生物の展示もたくさんあります。

こっちのコーナーに進むと
あれ?カブトガニさんどこ?ってなります。

ダウ・ケミカルとデュポン・スタイロの貢献

施設2階の大部分は
化石やレプリカの展示がほとんどで
その多くがダウ・ケミカルと
デュポン・スタイロからの寄贈品でした。

なんでかなー?と調べてみると
デュポン・スタイロは
元々はダウ化工という名前で
工場が笠岡市にあり
その当時の親会社がダウ・ケミカルでした!

なので昔の寄贈品にはダウ・ケミカルの
名前が入っているみたいですね。

ダウ化工は、米国石油化学品トップのダウ・ケミカルの子会社です。ダウ・ケミカルの「2015 年持続可能目標」のひとつに「地域社会繁栄への貢献」があります。この目標の達成を目指した国内活動の一環として、ダウ化工は、今後も地域貢献活動を工場の所在地である笠岡市で実施していく計画です。
ダウ化工の笠岡工場は、1982 年より「スタイロフォーム」押出発泡ポリスチレン板の生産に従事しています。「スタイロフォーム」は住宅やビルの断熱材として世界中で広く利用されています。

ダウ化工、今年も笠岡市立カブトガニ博物館へ寄贈

スタイロフォームって
青い発泡スチロールのイメージですけど
こんなところで作っていたんか…

なおデュポン・スタイロになってからも
寄贈は続いているようです。

この頭骨レプリカさっき飾られてましたね!

まとめ

ライセート試薬を通して
カブトガニの医療への関わりと
笠岡市立カブトガニ博物館の紹介を
させていただきました!

人によっては生理的に
受け付けない人も多そうですが
カブトガニの医療貢献に
想いを馳せていただければ幸いです!

ふるさと納税でカブトガニ保護に協力できます

カブトガニの医療貢献を
ご理解いただいただき、さらに
カブトガニ保護に協力したいな〜
という方は
笠岡市のふるさと納税はいかがでしょうか?
笠岡市の寄付金用途には
『カブトガニに関する事業』が存在します。

寄付金はカブトガニを守る活動…
具体的にはカブトガニの繁殖する海岸の清掃
幼生の放流などの保護活動に役立てられます。

カブトガニを守る活動等に活用します。
岡山県笠岡市には,カブトガニをテーマにした博物館としては世界唯一の『カブトガニ博物館』があります。研究員が日夜,カブトガニの保護育成の研究に取り組んでいます。
私たち笠岡市民も,カブトガニの繁殖する海岸の清掃や,幼生の放流などの保護活動に一生懸命取り組んでいます。私たちの活動を応援してください。

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チク子

いやはやカブトガニ様…
ありがとうございます!

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