当ブログではサーチュイン遺伝子に関する特集を組んでいまして、今回がその3回目になります。
その1ではサーチュインの基礎、その2では実際に活性化する方法を紹介させていただきました。
ちょっと噛み砕き切れていない部分も多くごめんなさい。ただ私は気持ちよく書いています(笑)
そして実はその中で、活性化する方法をあえて除外して紹介したものがあります。
というのも非常に厄介な問題を孕んでいるので、あえて分けて紹介したいと考えた為です。
また薬なんかも研究されているのですが(メトホルミンとかレスベラトロールとか)、ちょっとパッとしなかったり、誤解も招きうるので今回は除外します。
そんなあえて避けてきたものの中で、話題性から既に使われ初めており、
どーしても避けて通れないなと感じているもの
それがNMNです!!
既にサプリメントにもなっている物質ですが、最近のサプリメント関連のパンドラボックスのだと思っています。
…でコレが何しているのよ??
最初っから言いなさいよ?使えないわね!!
・NMNサプリメントを飲む前に知っておいた方がいいことがわかります。
NMNって何?
まずNMNに関して簡単な紹介をさせていただきます。
ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、略称: NMN、β-NMN)は、リボースとニコチンアミドに由来するヌクレオチドである。すべての生物種に存在する補酵素であり、牛乳などさまざまな栄養源に含まれている。ヒトにはNMNを利用してニコチンアミドアデニンヌクレオチド(NADHおよびNAD+)を生成する酵素が存在する。
リボースっていう糖とニコチンアミドというビタミンBから構成されている物質で、全ての生物が持っている物質です。
補酵素っていうのは名前の通り酵素の働きを補助する物で、コレがないと生物は体の中で各種化学反応を行うことができません。実は多くのビタミンが補酵素だったりします。英語でコエンザイムです。
人間はNMNをニコチンアミドアデニンヌクレオチド(NADHとNAD+)に変換することができます。
ちなみにNADHとNAD+は還元型&酸化型という構造上の違いがあります。
大事なのはNMNはニコチンアミドアデニンヌクレオチド(以下便宜上NADと表記)に変換されてる!!これです!
NADの働き《サーチュインの燃料》
NMNから生成されるNADですが、直接的にはコレがサーチュインを活性化することがわかっています。
正確にはサーチュイン酵素がNAD+を使ってDNAのヒストンへの締め直し(脱アセチル化)を行います。
つまりNAD+が十分にないと、DNAの締め直しが十分にできず、緩んだDNAが余計なタンパク質を翻訳してしまい生体に混乱をきたし結果として老化につながってしまうと考えられています。
また余談ですが、DNA 1本鎖損傷の修復酵素である PARP というDNA修復酵素も、NAD を使って修復を行っています。
つまりDNA修復が遅れることでサーチュイン酵素が長時間持ち場を離れることにも繋がります。
- サーチュインが持ち場を離れる
- サーチュインの活性が落ちる
NADの欠乏はこの二つのルートにより、より生体に混乱をきたし結果として老化を引き起こしてしまいます。
実際、体内のNAD+濃度は加齢に伴って低下することがわかっており、脳、血管、筋肉、免疫細胞、肝臓、皮膚、内皮細胞と全身で減少します。
減るなら飲めばいいんじゃない?
NADが老化で減るとなると、NADを直接摂取すればいいんじゃない?という疑問が当然出てくるわけです。
ただ、コレできないみたいです。人体はNADを栄養素として、直接的な吸収・取り込みはできないんです。
そこで、科学者が目をつけたのが前述のNMN、そしてNR(ニコチンアミドリボ
NMNサプリメントを飲む前に知っておいた方がいいこと
NMNめっちゃ良さそうですよね…でも本当でしょうか?
現在人体においてNMNまたはNRでわかっていることをは下記2点です。
- 人での安全性は確認されている。
- 人での効果は確認されてない。
まぁコレが全てです。効果は確認されていないんですね。
ならなんで、積極的に推進する人びどかいるかというと動物実験の結果をもとに、見切り発車しているからなんです。
なので。見切り発車を許容できる人にはいいのかもしれません。
人での安全性は確認されている
安全性に関しては2020年に慶應大学が世界で初めて確認を実施しています。
本研究では、40 歳以上 60 歳以下の健康な男性 10 人を対象に、研究期間中同じ方に 100 ㎎、250 ㎎、500 ㎎と異なる量の NMN を経口で各 1 回投与しました。
すべての用量で NMN の摂取後に、血圧や脈拍などに変化を認めず、肝臓や腎臓などの機能をみる血液・尿検査で も基準値を超える変化は認めませんでした。また視力などの目の機能、睡眠の状態にも影響 を与えませんでした。
さらに NMN から作られる代謝産物の血液中の量を測定したところ、 投与量が増えるほど、代謝産物量も増加していることが認められました。
これらの結果から経口投与された NMN は、ヒト体内で投与した量に応じて代謝されるこ と、加えて、500 ㎎の単回投与までは安全にヒトに使用可能であると考えられました。
この内容は既に文献化もされています。
方法をもう少し詳しく紹介すると一晩絶食した後、午前9時にカプセルで100 、250、または500 mgのNMNを経口投与して5時間追跡した様です。血糖の低下やインスリン量の低下も認めています。
ミトコンドリアを活性化したせいか血糖も低下している様に見えます。
一見すると安全かつ効果ありそうそうじゃないですか?
血圧や脈拍などに変化を認めず、肝臓や腎臓などの機能をみる血液・尿検査で も基準値を超える変化は認めませんし、
血糖も下がっているわけです。
でもコレってまやかしです。
このデータをもって500mgまでなら飲んでも大丈夫です…とはなりません。
仮にそう言っている人がいたらペテン氏です。全力で逃げ出しましょう。
まず、このデータはあくまで単回投与試験です。なので長期服用した場合の安全性は全くわかりません。
あくまで500mgを一回だけ健康男性に飲ませて大丈夫であったということに過ぎません。
効果に関しても、この試験はプラセボをおいた試験ではないので注意が必要です。
単純に空腹で代謝産物が増えた&血糖値が下がった可能性も否定できませんし実際文献中にも同様の記載があります。
・サプリメントとしての長期使用は人体実験的側面がある。
人での効果は確認されていない
人に対しての有効性も確認されていません。
動物実験の結果からもちゃんと使えば効きそうなイメージを受けますが、
どれくらいの量をどれだけの期間
使えば確実に効果があるか全くわかっていません。
さらにいうとマウスで証明されているのも、老化に伴う疾病を改善したというもので、
寿命を明確に延長したというデータは未だない様です。(NRではある)
NMNとNRのマウスデータの例
参考:Yoshino, J., Mills, K.F., Yoon, M.J., & Imai, S. (2011) Cell Metab., 14, 528–536.同様にNRもマウスのサーチュイン活性を促しミトコンドリアの代謝を促し高脂肪食の悪影響を打ち消す。
参考:Canto, C., Houtkooper, R.H., Pirinen, E., Youn, D.Y., Oosterveer, M.H., Cen, Y., Fernandez-Marcos, P.J., Yamamoto, H., Andreux, P.A., Cettour-Rose, P., Gademann, K., Rinsch, C., Schoonjans, K., Sauve, A.A., & Auwerx, J. (2012) Cell Metab., 15, 838–847.
このデータの用量も500mg/kgですね
マウスからの用量換算はヒト等価用量の式を使って求めます。
= 動物用量(mg/kg) x (動物体重(kg) / ヒト体重(kg)) 0.33
マウスの重さを30g 人間を60kgとすると40.7mg/kgです。
60kgの成人に使う場合は2400mg
なのでこの結果と同じ効果を期待して使うなら2400mgを腹腔内投与しなければなりません。
この量は安全性が確認されている500mgの単回投与を遥かに上回ります。
経口だと吸収率や初回通過効果の問題もありますのでさらに高用量が必要でしょう。
1年間100mg/kg/日をマウスに投与した場合4%体重が低下したというデータも出ていますので
これだと60kgの必要量は487.8mg…つまり単回の安全性を検討した500mgを1年間飲み続ければ達成が可能です。
4%というと2.4kg…かなり大きなダイエット効果ね。
・人での有効性は確認されていない
・1年で4%痩せるだけでも安全性が確認されていない500mg/日の用量がいる
NMNサプリメントの問題点
ここまで読んでいただいた方はご理解いただけているでしょうが、
NMNサプリメントには長期投与した試験は当然ありません。
故に安全性はわかりません。
そして、実は含有量がメチャクチャ少ない&高額です。
具体的には
B社:1錠50mg/180錠入り112,100円
C社:1錠125m/60錠入り12,800円
(安いと売り出して問題になった某インフルエンサーの商品)
この他カッスカスの低用量しか入っていない商品もあります。
これらで500mg/日の用量を満たそうとすると
B社:10錠/日 約300錠/月 186,800円
C社:4錠/日 約120錠/月 25,600円
1年間飲み続けるとすると
B社:224万円
C社:30万円
そして得られる可能性のある効果も体重4%分です。さらにその効果も人体では未だ証明されたものではありません。
ちなみに3倍に増やすとマウスの体重は9%減ったので、用量依存の可能性もありますが、その場合は価格も3倍です。
60kgの9%って5kg程度ですからね。
それに2000万から90万かけるのはあまりにコスパが悪いですよね。
高い高い言われがちなライザップの方がはるかに安い金額でよりいい結果を残せますね。
何より安全性はNMNよりいいのは明確でしょう。
論理的に考えてNMNを飲もうと考えている人はライザップに行った方がいいです。
NMNサプリメント飲む前にこれをみて
・そして長期使用の安全性は確立していない。
・ライザップの方がはるかにコスパよく安全。NMN飲む前にライザップ
あとがき
NMNの概要とサプリメントの問題点について紹介しました。
安全性を主張する意見も多いですが、確実にヒトで有効な用量もわかってないですし、それを長期投与したデータもありません。
そしてマウスのデータから効果を期待する場合も高いです。(普通に使っても高いですが…)
これを飲むだけの財源があるのならば、やれることはまだまだ沢山ある状況です。
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