12月16日、塩野義製薬が新型コロナウイルスワクチンの第1/2相臨床試験を開始しました。
ファイザーやモデルナ等の外資系のワクチンが承認されていく中、ちょっと今更感はあります。
しかし、開発元は感染症のスペシャリスト企業「塩野義製薬」
そこらのバイオベンチャーとは技術力、開発力、流通力等の総合力が段違いです。
さらに私は将来的には国産ワクチンはあった方が良いと思っています。
理由は国防です。
もし外国がワクチンを人質に外交をしてきたら、日本にとってかなりの損失ですよね?
言うこと聞かねーとワクチンうらねーぞ!!
国防的観点では最終的には国産ワクチンは必要そうです…
そうなってくると薬屋としてはどんなワクチンか非常に気になる訳です。
恐らくこの記事を開いてくれた方もどんなワクチンか気になっていますよね。
当社が本年4月より開発に取り組んでいるワクチン(開発番号:S-268019)は、グループ会社のUMNファーマが有するBEVS注1を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンです。遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供されます。遺伝子情報そのものを投与し、体内にて抗原タンパクを合成させるmRNAワクチン等の新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、BEVSを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術です。これまでに、選択した抗原タンパクおよびアジュバント注2を用いた非臨床試験において、安全性と有効性を示唆する結果が得られており、冷蔵条件下での製剤中の安定性が一定期間確認されています。
注1 Baculovirus Expression Vector System:昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術
注2 免疫を活性化させ、ワクチンの効果を補強する物質
開始した第1/2相臨床試験は、複数用量の抗原タンパクおよびアジュバントの組み合わせからなる、200例以上の日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験です。少人数での安全性・忍容性を確認する第1相パートおよび至適用量の検討を行う第2相パートにおいて、本ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性を、接種後1年間追跡評価します(jRCT : 2051200092)。
永遠の中二病のワイにもわかる様にしなさいよ!!
S-268019の製品特性は?
まずは最初の部分を確認していきます。
当社が本年4月より開発に取り組んでいるワクチン(開発番号:S-268019)は、グループ会社のUMNファーマが有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンです。遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供されます。遺伝子情報そのものを投与し、体内にて抗原タンパクを合成させるmRNAワクチン等の新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、BEVSを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術です。これまでに、選択した抗原タンパクおよびアジュバントを用いた非臨床試験において、安全性と有効性を示唆する結果が得られており、冷蔵条件下での製剤中の安定性が一定期間確認されています。
BEVSってなに?
まずは多くの方が困惑されると思われますBEVSについて軽く紹介します。
文中にもあるとおりBEVSはBaculovirus Expression Vector System:バキュロウイルス発現ベクターシステムの略です。
バキュロウイルスは、バキュロウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスです。
数多くの昆虫に感染する昆虫をターゲットとしたウイルスです。
バジュラも虫っぽいっし関連づけると覚えやすいかも…
なおバキュロウイルスは、最も研究されている昆虫ウイルスのひとつです。
このバキュロウイルスと昆虫細胞を使って目的とするタンパク質を作る方法がBEVSです。
ざっくりとした方法は
- バキュロウイルスにワクチンを作りたいウイルスのタンパク質情報を組み込む
- 培養した昆虫細胞に感染させる
- 昆虫細胞が目的のウイルスタンパクを作る
- 目的タンパクを精製していらないモノを取り除いてワクチン化
こんな感じでワクチンを作ります。
余談ですがHPVワクチンで有名なサーバリックスもバキュロウイルスを使って作られています。
mRNA系ワクチンが人体内でタンパクを作らせるのに対して、
BEVSは昆虫細胞に作らせて、そのタンパクをワクチンとして打つのね。
プレスリリースのから見える製品特性の意訳
ややこしいBEVSがわかったところで、本丸を紐解いていきます。
原文
-
グループ会社のUMNファーマが有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンです。
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遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供されます。
-
遺伝子情報そのものを投与し、体内にて抗原タンパクを合成させるmRNAワクチン等の新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、BEVSを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術です。
-
これまでに、選択した抗原タンパクおよびアジュバントを用いた非臨床試験において、安全性と有効性を示唆する結果が得られており、冷蔵条件下での製剤中の安定性が一定期間確認されています。
意訳
- UMNファーマの技術で昆虫細胞にコロナウイルスのタンパク質を作らせて作ったワクチンです。
- 遺伝子組み換えワクチンはウイルスの遺伝子情報からウイルスのタンパク作って、タンパクを精製してワクチンにしています。
- 人体内でタンパクを作らせるmRNAワクチンと比べて開発に時間はかかりますが、mRNAワクチンと違って歴史があり効果と安全性が確立した技術です(暗にmRNAは効果と安全性が確立した技術じゃないって言っています)。
- 動物実験では、安全かつ有効な結果が出ていますし、冷蔵条件(10℃以下)で流通できます。(暗に−20℃や−80℃で管理しなければならないm RNAワクチンより流通させやすいですよって言ってます)
S-268019の臨床試験は?
臨床研究実施計画・研究概要公開システムに既に試験が登録されていましたので、そこから確認できます。
第1相の患者背景
・医学的評価により明らかに健康と判定された者.
・スクリーニング時の体格指数 (BMI) が18.5 以上,25.0 以下の者.
第2相の患者背景
・スクリーニング時のBMI が18.5 以上,30.0 以下の者.
確かに小児や高齢者等、最も使いたい人に対するデータがないと片手落ちになってしまうもんね
プレスリリースの確認
患者背景がわかったところでプレスリリースの臨床試験を紐解いていこう!
開始した第1/2相臨床試験は、複数用量の抗原タンパクおよびアジュバントの組み合わせからなる、200例以上の日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験です。
まずはこの部分、複数容量の抗原タンパクとアジュバントの組み合わせを試す様です。
細かい用量に関しては調べましたが、記載がありませんでした、情報をまって追記します。
デザインは無作為化プラセボ対象二重盲検法比較試験ですので、非常に信頼性は高いといえます。
少人数での安全性・忍容性を確認する第1相パートおよび至適用量の検討を行う第2相パートにおいて、本ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性を、接種後1年間追跡評価します
あとがき
正直、このワクチンが今回のパンデミックをおさめるために使われることはほぼないかなーって思っています。
パンデミックが収束し、2〜3年たち、新型コロナウイルスがありふれた感染症として扱われる未来。
そんな未来の日本において、国産ワクチンとして毎年売れるワクチンの地位を狙っているんじゃないでしょうか。
冒頭でも申し上げた通り、国防の意味でも長期的視点では国産ワクチンは必要です。
大量に安定生産する技術をもつであろう、塩野義製薬、UMNファーマには本当に頑張って貰いたいですね。
結構、気の毒な会社なのよね…がんばれUMNファーマ!!
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