本記事では
- 販売する製品が複数あり、どの製品を売るべきか判断がつかない!!
- あれもこれもやれ!!と言われてできないよ!!
- ほんとにやるべき製品はどれ?
こういったお悩みをお持ちの若手MR向けに『こんな方法もあるよ』という、いちMRの解決策を紹介しております。
実績重視のリソース配分術
訪問軒数×訪問戦略=価値=実績
これは営業における真理です。
いくらさまざまな営業方法が生まれてきても試行回数である訪問軒数が一定の成果を生みます。
そんな営業職であるMRの私ですが、私は訪問軒数が人より少ない…まわれないという致命的欠陥を抱えています。
新人の頃は何とかこの欠点を克服しようと努力もしましたが、うまくいきませんでした。
もともと1対1の競技で頑張ってきたせいもあるのかもしれませんが、マルチタスクが極端に苦手みたいでして、訪問軒数に反比例するように他の業務が疎かになってしまいました。
他の業務との折り合いをつけられるラインが1日5~6軒くらいの訪問です。
全て会えるわけではありませんので、月の面会数は100軒弱です。
一般によく回るMRというのは120軒/月以上といわれているので、そのラインには届きません。
当然何も持っていない新卒当時は実績も上げられず泣かず飛ばす…かなり苦しみました。
今となっては笑い話ですが、直属の上司に『向いていない会社辞めろ』といわれたこともあります。(結構ショックでした)
おそらく本当にMRに向いていないんでしょう。
しかしながら幸いだったのは極度の負けず嫌いと鈍感なメンタルがあったことでしょうか。
何とか戦い続け、近年は何だかんだ半期に1つは表彰されるくらいの実績は上げられるように進化してきました。
今期もおそらく総売上評価で片手に入る実績でフィニッシュできそうです。
致命的欠陥は治っていません。未だに訪問軒数は営業所で最下位群です。(真面目に訪問記録入力しているからね!少ないリソースの状況管理のためポチポチしてないんです。)
それでも何故そこそこ戦えるようになったかというと、訪問戦略を考えることが好きだったからです。
訪問軒数×訪問戦略=価値=実績
これは真理です。でも訪問軒数は増やせない…これをまず認めました!!
こういうと訪問軒数が稼げる人から見ると逃げの様に見えるかもしれません。
病気みたいなもんなんです。特性です。無理に回ると壊れちゃいます。
回れないなら訪問戦略で勝負するしかないよね!ということで諦める前に戦略特化したことが現在幸いしています。
今回記事作成にあたってこれまでの経験を初めて体系化しています。
これから複数回にわけて自身で整理していきながら、回らないMRの戦略を皆さんに共有していければと思います。
初回である今回は
- 販売する製品が複数あり、どの製品を売るべきか判断がつかない!!
- あれもこれもやれ!!と言われてできないよ!!
- ほんとにやるべき製品はどれ?
こういった方向けに『こういった方法もあるよ』ということを紹介していきます。
なお今回の内容は営利組織としての製薬会社の側面、それも個人が実績をあげるためという側面が強いです。
もしかすると生命関連産業にも関わらず、売上げ重視に見えて不快に感じる方がいらっしゃるかもしれません。
予めお詫びいたします。しかし、ノルマがあるのがMRです。
新しい薬を開発するためにはお金を稼がなくてはなりません。
また個々のMRの適正な努力は情報の研磨につながり最終的には患者様の利益につながると信じています。
私たちは日々そういった誇りをもって営業活動にあたっています。
そんなMRがこんなこと考えながら仕事しているよ!!という内容です。
注意点
今回紹介する方法は前提として
- 売る製品が5製品以上ある
- 総売り上げの評価が最も大きい
- 私はMRとして二流
上記前提の下に成り立つ方法です。
私がこんな背景の会社で育ってきたので、3製品しか評価品目ないよ!!とか総売り上げなんか関係ないよ!!といった方では考え方が異なるかもしれません。
また担当交代まもなく情報が少ない時期や新薬発売時にはこの思考方法は直接使えませんのでご留意ください。
あくまである程度市場の概況がわかっていて、かつ安定している状態で効果を発揮します。
こざかしい考え方はありますので、新薬立ち上げ時の考え方もそのうち紹介します。
売らない製品を決める
まず、機械的に売らない製品を決めます。
やることを決めるのではなく、やらないことを決めます。
これは慣れないと『え??大丈夫?』と思ってしまいますがリソースは有限です。
少ないリソースから最大の成果を生むためには効率的な歯車を選択していく必要があります。
そのためには0ベースで考え、非効率的な歯車を選択し外していく作業が必須です。
マネージャーがやらない製品を作ると聞いたら激怒しそうですが、効率的に営利活動をするためにはマーケティング的思考は重要です。
私はこの歯車選びに4つの項目を使っています。
- 1症例あたりの売上の絶対値
- 社内評価
- コプロメーカーの強度
- 競合の強度
上記4つです。
この他にも製品の将来性なども加味しますが、主軸はこの4つです。
1症例あたりの売上の絶対値は主観で良いです。
この製品は1例処方されると売り上げが大きいという品目基準は扱っている製品群や個人の感性でそれぞれ違います。
それでも多くの場合は上位2~3製品になるでしょう。
私はシビアに2製品にしています。
この項目をつかったマトリクスが以下の表です。
それぞれ、便宜上A~Pの16の番号を振っておきます。
1症例当たりの売り上げが大きい | 1症例当たりの売り上げが小さい | ||||||||
社内で評価される製品 | 社内で評価されない製品 | 社内で評価される製品 | 社内で評価されない製品 | ||||||
コプロメーカーが強い | 競合が弱い | A | B | C | D | ||||
競合が強い | E | F | G | H | |||||
コプロメーカーが弱いまたはいない | 競合が弱い | I | J | K | L | ||||
競合が強い | M | N | O | P |
まず、自身の担当製品をこの表に当てはめます。
評価の強弱も主観でOKです。
ある程度キャリアを積んだMRの主観の精度は高いものです。
当てはめたら、これをもとにやる品目、やらない品目を決めていきます。
具体的にはC、D、F、H、L、O、Pはやりません。
売り上げが小さく、社内評価も小さいD、H、L、Pはほとんどの人がもともとやっていないでしょう。
CFの戦略:そこそこの数字を目指す。
CとFの基本戦略は同じです。
強いコプロメーカーに頼って、そこそこの実績を得ておけばOKという戦略です。
Fは売り上げが大きくコプロメーカーも強いけれど、競合が強く社内評価も低い製品です。
Cは社内で評価されてコプロも強い、さらに競合が弱い…一見おいしそうにみえるけれども症例当たりの売り上げが小さい製品です。
評価が低かったり、大きく売り上げが見込めない製品です。
こういった先はコプロ一人でも大丈夫なので頼ってしまいましょう。
飯おごったり、状況をみて共闘して徹底的にゴマすりましょう!!!
1位は取れなくても平均くらいは取れます。それで十分!!
ただCに関しては単独の施設で巨大な市場を有しているケースもままあるので、そういった施設ではしっかり戦いましょう。
1位を取れなくても総売上のインパクトが少なかったり、評価自体されないので大きな問題にはなりません。
ここで作ったリソースをより良い歯車に投入しましょう!!そのための必要経費です。
Oの戦略:時間泥棒とはお別れしよう!!
Oは問答無用で切り捨てましょう。
社内評価はされるけれども売上は小さくコプロもおらず競合が強い製品です。
これは総売上評価につながらない上、一人で奮闘しなければ結果を生まない製品です。
心を鬼にして捨てましょう。競合にやられまくりますが他の効率的な製品で取り返せばOKです。
市場の大きな数軒でのみ活動を展開し、余ったリソースは他の薬に全投入しましょう。
Oは社内評価がされるので意外とリソースを割いてしまいがちですが、売ってはいけません。リソースは限られているのです。
競合が強いため、想定以上にリソースを消費する可能性が高いです。
ここにリソースをさけるのは何も考えていない人かリソースお化けのスーパーMRや新人だけです。
なお、やらない製品を決めたら可能な限りロジックと共に上長に根回ししましょう。
まともな上長なら理解が得られます。
得られないならばあきらめてこっそりやりましょう。
余談
余談ですが意外にわかっていないMR多い内容です。
医薬品の切り替えって意外と参入障壁が高いです。
治療がうまくいっている時って薬かえることが困難です。
少々、MRのリソース投下が落ちたという理由だけではこの参入障壁を超えるのはかなり困難です。(顧客によってはびっくりするくらい低い人も稀にいます。)
うまくいっているのに切り替える説明を患者にしなければなりません。
これは医師にとってもかなりのストレスです。
完全に訪問しない状況は良くありませんが、ある程度顔を出していれば現状維持は比較的容易です。
売るべき製品に全集中する!!
売らない製品で出来たリソースを売るべき製品にリソースを徹底的に投入します。
売るべき製品はA、B、E、I、Mです。
EとM戦略:負けられない戦いがソコにはある
特にEは競合が激しいながらもリソースの集中投下で勝利できる部分です。ここは何が何でも勝ちましょう。ここで全力を尽くすことが最も重要になります。
ここで負けると悲惨なことになりますので全力で行きましょう。
負けられない戦いがここにはあります。
Mはコプロの協力がなくとも勝てそうなら勝ちに行きましょう。
ですがここはEの次でいいです。勝つべきところは抑えた上でMも戦いましょう。
A,B,Iの戦略:短期決戦
A、B、Iに関しては短期決戦です。残りの余力や余剰時間を使って3か月で勝負を決めてください。
だらだら戦わず、早期に仕上げられる製品です。
ランチェスター戦略でいうトップ地位が安定するシェア26.1%を短期で狙っていきます。
可能ならば地位が圧倒的に有利となり立場が安定するシェア41.7%まで行ければベターです。
E、Mで戦いながら守りの薄いA、B、Iを狙い売り上げの基礎に作り替えていきます。
なぜ短期決戦が重要かというと、ここを早期に仕上げることで余剰リソースを作り、さらにE,Mにリソースを割くためです。
また、ダラダラと戦っていた場合、競合の担当者が交代して強力な担当者がやってきてします可能性もあります。
わたなぎの田所さんみたいな人が転勤してくる前に決着をつけておく必要があります。
動き出しはA,B,I、E、M全て活動する必要がありますが、早期に仕上げることでE、Mに集中できるようになり戦いやすくなります。
全体の戦略をまとめるとこんな感じでしょうか。(いやし製品なんかもあります)
1症例当たりの売り上げが大きい | 1症例当たりの売り上げが小さい | ||||||||
社内で評価される製品 | 社内で評価されない製品 | 社内で評価される製品 | 社内で評価されない製品 | ||||||
コプロメーカーが強い | 競合が弱い | 全集中!! 短期で実績にして その後はパトロール |
全集中!! 短期で実績にして その後はパトロール |
やってるふりしてできるだけコプロに頼る | やらない | ||||
競合が強い | 主戦場&全集中!! 長期的な戦略とリソース投入。 使えるものは全て使う。 |
やらない | コプロ共闘する。それなりに頑張るが本気は出さない。場合によってはやらない。 | やらない | |||||
コプロメーカーが弱いまたはいない | 競合が弱い | 全集中!! 短期で実績にして その後はパトロール |
いやし。 気が向いたときにリソース投下し実績をあげメンタル回復材料にする。 |
拠点となる得意先を選んで戦う | やらない | ||||
競合が強い | 勝てそうな顧客を選んで戦い住み分ける。(勝てそうな場合は勝つ) | やらない。実績減ることを覚悟。競合を引き付けるデコイとして製品名だけ口に出したりする。 | やらない | やらない |
ただ、これが全てではありません。顧客の状況をみて微調整を行いながら適用していきます。
売らない製品も売る
ここまで製品ベースで紹介してきましたが、A、B、I、E、Mに十分なリソースを割くうちに人として仲良くなり積極的に製品を使ってもらえる顧客が出てきます。
真面目に仕事をしていれば少なからずそういった場面に出くわします。素直に喜びましょう。
そうなれば売る予定の製品は当然使ってもらいますが、リソース獲得目的で戦略的にやらなかった製品も使ってもらいましょう。
個人として1位になった顧客はあなたに信頼を寄せている顧客ですので、ロジカルな内容であるならばある程度納得してこちらの製品を使っていただけます。
特にNは実績も大きくなることが想定されますので、何を使って貰おうか悩んだらオススメです。
とはいっても最重要は患者様中心の情報提供
当たり前なので、あえて言及は避けましたが、顧客に強くなったからと言って適当に使ってもらえばいいわけではありません。
あくまで、患者のメリットになる使い方をしていたくように徹底しましょう。
あとがき
シビアにリソース配分をすることで、訪問軒数の少なさをカバーすることは間違いなくできます。
とくにコロナ禍の中、リソース配分はさらに重要になるのではないでしょうか。
ただ1つ勘違いしないでほしいのは訪問軒数は戦略と同じくらい大事です。
本来ならば両軸そろっている状態がベストです。
目指せる人は両軸そろった1流を目指してください。
私はそれができない2流なので戦略に特化し逃げたにすぎません。
それでも戦えているのは、多くのMR(すくなくとも弊社では)にリソース配分の視点が欠如していて時間泥棒にリソースを使っているためです。