オンライン資格認証とは
オンライン資格確認の概要
冒頭で紹介した通り、オンライン資格確認導入によりマイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等だけでオンラインで被保険者資格情報の取得ができるようになります。
その他にも医療費の自己負担額適応認定証等の情報や患者合意のもと、特定健診情報やレセプト情報から服薬履歴の閲覧も可能になる予定です。
これにより支払基金と国保中央会が被保険者の資格情報を一元管理できるようになります。
引用:厚労省HPより
メリット&デメリット
メリットは医療機関側のメリット、患者側のメリット、そしてデメリットがありますので、それぞれ分けて紹介します。
医療機関側のメリット
医療機関側のメリットに関しては厚労省のHPの詳しくまとめられています。
厚労省資料:200706【講演資料】医療機関・薬局向けオンライン資格確認導入の手引き(追記:現在資料削除されました。)
医療機関側のメリットは大きくは以下4点
- 保険証の入力の手間削減:氏名、生年月日、住所、保険証番号を入力していた手間が最小限になります。
- 資格誤植(保険証の期限ぎれ等)入力によるレセプト返還の削減:これまでは間違った情報を入力していた場合、間違ってますよーってチェックが入っていました。人間なので当然ミスしますからね。そういったミスがなくなります。
- 限度額適用認定証等の連携:限度額適用認定証を提示すると、受けた保険診療の自己負担額がそれぞれ一つの医療機関について自己負担限度額までとなり、一時的に多額の診療費用を支払う必要がなくなります。発行まで時間がかかるため、患者が一時負担金を払えず医療機関とトラブルになる手間や発行の補助をする手間がなくなります。
- 薬剤情報・特定健診情報の確認:これは薬剤の重複や患者自身が忘れている検診情報等を確認できるメリットがあります。また災害時等にお薬手帳等がない状況でも服用薬を確認することができます。
患者側のメリット
患者側のメリットは厚労省の資料にはほぼないのですが、ほとんどは医療機関側のメリットの裏返しになります。
- 保険証の入力の手間削減:受診時間の短縮に繋がり待ち時間が減るかもしれません。
- 診療予約の段階で保険証の失効が確認できる:病院行ってから『あ!保険証きれている!!受診できない!!』ということがなくなります。同様に転職などで保険者が変わっても新しい保険者が資格情報を登録することで、新たな健康保険証の発行を待たずに保険医療機関等で受診できるようになります。
- 限度額適用認定証等の連携:え!?そんなに現金持って来なきゃならないの?と言うケースが減ります。急な出費が減るのは患者メリットが大きいです。
- 薬剤情報・特定健診情報の確認:全て自分で資料保存して持っています!!って方ってほどんどいないですよね?あと知らず知らずのうちに別のクリニックで似たような薬を処方されることがなくなります。もちろんお薬手帳を活用している人は調剤薬局で発見してもらえますが、お薬手帳よく無くす人にとっては光明かもしれません。
- マイナンバーカードがあれば保険証がいらなくなる:2019年5月の健康保険法等の一部改定でマイナンバーカードを健康保険証として利用できる様になっています。財布のスペースが空きます。コロナ禍の給付金目的でカード作成した人多いのではないでしょうか?今後、さまざまな物がマイナンバーカードに紐付けされればカード1枚で何処へでも外出できる日も近いかもしれません。
あとこれは私見ですが、恐らく高額療養費制度の連携もマイナンバーカードなら可能でしょう。そのため医療費自体、非常に安くなる人が出てくるかもしれません。窓口で確認できれば一時負担金も大きく減ります。
高額療養費制度って使いこなせている医療機関と使いこなせていない医療機関がある上に、年収で限度額が大きく変わるということや、勤めている会社で限度額が違ったり、家族の総医療費を計算したりと非常に確認の手間が多い作業なんです。
患者側が精通していれば問題ありませんが、精通しておらず、医療機関でも使いこなせていない場合、使えるはずの制度を使えていない人って意外に多いです。
年収等を紐付けできるマイナンバーカードならばこの連携も可能なはず。限度額適用認定証等の等の部分にあたる様な気がしてなりません。これが実装されると患者メリットが非常に大きいと感じます。
また、賛否ある内容ですが、患者情報のデータベース化とビックデータ利用も行いやすくなります。疾病予防や新薬開発に利用されることで開発スピードが上がることが期待できます。個人情報保護の観点から議論は必要ですが、国際競争力を上げていくためには必要な内容だと私は考えます。
デメリットと反対意見
いいことばかり書きましたが、当然デメリットもあります。また大きな変化を伴いますので反対意見もかなりあります。東京保険医協会という大きな会も明確に反対を表明しています。
反対意見があげるデメリットの要点は下記4点です。変化への拒絶と個人情報保護に関する問題がメインです。
- 患者側は本人確認を含めた新たな手間が増える:これまで保険証を窓口に出すだけで済んでいたものが、初回登録作業とカメラを使った顔認証、事務員による目視確認、暗証番号入力のどれかの作業が必要です。
- 設備投資、教育投資が必要:医療機関側も、種々の設備増設が必要になり、さらに本人確認をはじめ複雑な操作が増えるため、事務員の増員や教育が必要になる。ちなみに顔認証用のカメラ付きカードリーダーは約9万円します。
- 取り違えリスクの増加:マイナンバーカードの紛失や取り違えが起こった時のリスクは保険証の比じゃない。
- 患者情報のクラッキングリスク:レセコン、電子カルテの院内システムがインターネットに接続されることになり、患者の医療情報という繊細な情報がクラッキングリスクに曝される。
ただこの反対意見に関しては思うところがあります。
患者側の本人確認の手間と言っても、初回登録は煩雑かもしれませんが、その後は事務員による目視なら全く現行と変わりありません。設備投資に関しても顔認証つきカードリーダーは無償配布されますし、システム改修に関しては改修費用の1/2〜3/4 分の補助がでます。
また事務員教育は変化への適応として受け入れるべきでしょう。
民間企業では競争力確保のためのシステム導入と刷新による再教育なんて当たり前に行われている訳で上2つのデメリットは変化へのグチにしか見えません。
ただ取り違えリスク増加と患者情報のクラッキングリスクはその通りです。実際実装されればこの問題は起こってしまう時が来てしまうでしょう。その時反対意見を述べていた人たちは『それ見たことか!』と言うのです。個人情報の漏洩って年数回聞きますし、医療機関全てがハイレベルなセキュリティを入れれるとは思えませんしね。
でもこれも考え方次第だと思ってます。ほとんどの日本人がAmaz○nとか楽○、○oogleに個人情報登録していませんか?クレジットカード情報登録していませんか?でもそれらは非常に便利ではありませんか?既に他所ではリスクに晒しているにもかかわらず、この部分だけ嫌がってメリットを受けないのは違う気がします。
さらにセキュリティに関しては差別化ポイントにもなり得ます。個人情報保護に過敏な高所得層を患者として取り込みたいのならば個人情報保護のセキュリティに投資し宣伝することで他医療機関と明確に差別化できるかもしれません。新たな経営戦略になり得ます。
カード取り違えに関してはスタッフと患者、スタッフとスタッフ等でダブルチェックを行うなどしてリスクを減らせるはずです。これは一人に任せてはダメな作業です。任せれば間違いなくミスに繋がります。
終わりに
いかがでしょうか。未だ議論がある内容で賛否分かれるでしょうが、私個人としては賛成しています。
というのも、あらゆる物事のIOT化(インターネット接続)は間違いなく進んでいきます。
皆様が感じている通り中国は特に凄まじく、あらゆるモノをIOT化することで膨大なデータを集め世界市場で戦っています。強い統制のもとさまざまな分野で莫大な内需を生む14億人のデータを解析している訳です。
日本、特に医療領域は個人情報保護の観点からIOT化が進んでいるとは言い難い状態です。このままでは膨大なデータをまとめ、国家総力で解析してくる国の後塵を拝する日が必ずやってきます。それはできれば避けたいです。
オンライン資格認証は日本の医療のIOT化の大きな契機となり得ます。多くの反対意見がありますが、国際競争に勝ち抜くために前向きに議論し、より良い方法が検討されることを願います。