2023年2月
ニプロファーマが業務改善命令を受けました。
※当社子会社に対する業務改善命令に関するお知らせ
まだ調査報告書は出ておりませんので
詳細は不明ですが、
業務改善命令からわかる内容を
まとめてみたいと思います。
ちなみに概要はこちらの
ニュース記事が詳しいので
共有します。
ニプロファーマによると、大館工場で2019年から21年8月にかけ、一部の注射剤の試験検査で、規格不適合の検査結果が出たのに規格に適合していると虚偽の記録を作成していた。検査を行わずに記録を作成するケースもあった。ただ、注射剤の品質に問題はなく、健康被害の報告もないという。
ニプロ子会社に改善命令 注射剤の検査で不正―秋田県
不正は21年8月、委託元の製造販売業者の監査で発覚した。
ニプロファーマは、検査担当者1人の独断によるもので、会社や工場の関与はなかったと説明している。
秋田県によると、行政処分の対象は42品目あり、同社が適切な管理者を配置しなかったとみている。県は「自主的に見抜けなかった会社の体制は問われるべきだ」とコメントした。
ニプロファーマお知らせ文と要約
お知らせ文を順番に確認し要約していきます。
導入文
当社の医薬品製造子会社であるニプロファーマ株式会社(本社:大阪府摂津市、代表取締役社長:西田 健一、以下「ニプロファーマ」といいます。)は、本日付で、秋田県から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「法」といいます。)違反を理由とする業務改善命令(以下「本命令」といいます。)を受けました。
当社子会社に対する業務改善命令に関するお知らせ
当社グループ全体で本命令を厳粛に受け止め、患者さまとそのご家族、医療関係者の皆さま、その他のステークホルダーの皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げますとともに、関係者の皆さまの信頼回復に向け、全力を挙げて是正措置を講じ、再発防止に努めてまいります。
本事案に関連して品質に影響があると考えられる製品は確認されておらず、製品の自主回収は行っておりません。なお、本事案による健康被害が発生するおそれはなく、これまでに健康被害の報告もございません。また、本件による 2023 年 3 月期通期の連結業績に与える影響は軽微であり、同予想値につきましては、2023 年 2 月 8 日に公表いたしました業績予想は変更いたしません。今後業績予想を見直す必要が生じた場合は速やかに開示いたしま
す。下記および別紙にて、行政処分の内容についてお知らせいたします。
【要約】ニプロファーマ株式会社は、
医薬品や医療機器などの
品質や有効性、安全性に関する法律に
違反したため、業務改善命令を受けました。
関係者の皆さんに
ご迷惑やご心配をかけたことを
深くお詫びし、
信頼回復に向けて全力で是正措置を講じ、
再発防止に取り組みます。
ただし、製品の品質に
問題があるとは考えられず、
自主回収もしていません。
健康被害の報告もなく、
2023年3月期通期の
業績にも影響は軽微です。
後半強気ですよね〜!
後述しますが承認書と違う方法で作って
逸脱品を見逃していたのに
品質に問題ない&自主回収もしない…
っていうのはユーザー心配なんじゃない?と
少し不安になりますね。
相当安全だ!
という確信があるのかも!
それなら安心か…
違反した大館工場について
ちなみに違反対象となった工場は
秋田県の大館工場です。
そのため管轄の秋田県から
業務改善命令が出ています。
名 称:ニプロファーマ株式会社 大館工場
所在地:秋田県大館市二井田字前田野 5 番 7
大館ってどこ?って方も多いと思いますので
Googleマップの画像を引用いたします。
秋田のかなり北で
医療圏的にも
弘前大学の影響を
強く受けるエリアです。
ストリートビューを見てもらうと
よくわかるのですが
めちゃくちゃデカい工場です!
何を作ってるかとHPで確認すると……
抗がん剤、抗生物質、
ステロイド剤等、各種注射剤を作る
ニプロファーマ最大の生産拠点みたいです。
大館工場では、様々なカテゴリーの高活性物質製剤(抗がん剤、抗生物質、ステロイド剤等)を製造しており、交叉汚染防止対策として製造棟の分離・独立方式を導入しているのが特徴です。
ニプロファーマ工場紹介
注射剤では、ダブルバッグ(PLW®)、プレフィルドシリンジ(PFS®)、ダブルチャンバーシリンジと言ったキット製剤中心に製造しております。
また、外用剤においては、最先端の溶剤型テープ剤製造ラインを導入しています。
800名を越える従業員が勤務するニプロファーマ最大の生産拠点として地元高校生を含む採用した社員は、実直で粘り強く、高品質な医薬品製造に大きく貢献しています。
800名規模の工場は
すごいですね!
違反内容
お知らせ文に
違反内容は4項目で書かれています。
特に最初の項目は
長文ですので分けて紹介します。
1ニプロファーマ大館工場で製造する製品について、承認書と異なる方法により製造及び試験を行っていたこと。また、製造・品質関連業務を適正かつ円滑に実施しうる能力を有する責任者を適切に置かなかったこと及び製造・品質関連業務を適切に実施しうる能力を有する人員を十分に確保しなかったこと。さらに、試験検査を行うのに必
当社子会社に対する業務改善命令に関するお知らせ
要な検体の採取、試験検査用の標準品の管理及び製品等のロットごとの試験検査に係る業務を適切に行わず、試験検査について規格に適合しない結果となった場合において、原因を究明して所要の是正措置をとらず、虚偽の記録を作成したこと。製造手順等について製品品質又は承認事項に影響を及ぼすおそれのある変更を行う場合におい
て、必要な変更管理を行わず、必要なバリデーションも適切に実施しなかったこと。製造手順等からの逸脱が生じた場合において、その内容の記録、逸脱したことによる製品品質への影響の評価・調査等、所要の措置をとらなかったこと。製造・品質関連業務に従事する職員に対し、製造管理及び品質管理に関する必要な教育訓練を計画的
に実施しなかったこと。
かなりの長文ですね…
ポイントだけ
抜き出すのよ!
問題点と詳細に分けて
表にしてみます!
問題点 | 詳細 |
---|---|
製造・試験の方法 | 承認書と違うやり方で作り、試験を行っていた |
責任者の不在 | 製品の品質・安全を管理する責任者を適切におかなかった |
人員不足 | 専門的な人材を十分に確保できていなかった |
検査業務の不備 | 必要なサンプルや標準品の管理、ロットごとの検査が適切に行われていなかった |
検査結果の不正 | 規格に合わない結果が出た場合、原因を調べず偽の記録をつけていた |
製造手順の変更管理 | 製品品質や安全に影響する変更を行う場合に必要な管理や評価を行わず、バリデーションも不十分だった |
逸脱の対応不備 | 製造手順から逸脱した場合、その内容を記録し、製品品質に与える影響を評価し、必要な措置をとっていなかった |
教育・訓練の不備 | 製造・品質関連業務に従事する職員に対して、製造管理および品質管理に必要な教育・訓練を計画的に実施しなかった |
大きな問題点が書かれているのですが
日医工と小林化工の問題があった今となっては
あーあるある!
といった印象で特筆するべき点は無いと思います。
程度の差こそあれ
昨今の製造違反あるあるです。
このあたりの過去記事を
見てもらうと
似た点を沢山見つけられる
と思います!
続けて残りの
問題点を確認します!
2 ニプロファーマ株式会社は、医薬品製造管理者について、その業務を遂行するために必要な能力及び経験を有する者を配置しなかったこと。また、品質方針及び品質目標を達成するため、製造管理及び品質管理に活用される資源を十分に配分しなかったこと。(法第17条第6項及びGMP省令第3条の3第4号)
当社子会社に対する業務改善命令に関するお知らせ
3 ニプロファーマ株式会社の医薬品製造管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その製造所に勤務する従業者を適切に監督せず、必要な注意を怠ったこと。また、製造管理、品質保証及び試験検査に係る業務が適正かつ円滑に行われるよう統括し、医薬品品質システムが適切に運用されるよう管理しなかったこと。(法第17条第8項において準用する法第8条第1項及びGMP省令第5条第1項第1号)
4 ニプロファーマ株式会社は、製造業者の業務の適正を確保するために必要な体制の整備、並びに医薬品製造管理者に製造管理又は品質管理を行わせるために必要な権限の付与及び医薬品製造管理者の業務の監督等、所要の措置を十分に講じなかったこと。(法第18条の2第3項第2号及び第3号)
問題点ポイント |
---|
医薬品を作る人の管理が不十分で、必要な資源を十分に使わなかった。 |
作業の監督や品質管理が適切に行われなかった。 |
作った医薬品が健康に影響を与える可能性がある状態で作られていた可能性がある。 |
必要な体制を整えるための措置が不十分だった。 |
犯している法令違反との対応関係から
問題点を作成している関係からか、
ポイントを抜き出すと前述の内容と
あまり変わらないように見えますね!
要は
- 人足りない
- 管理不十分
- 記録の不正
これらの複合ですね
処分内容
最後に処分内容を確認します。
処分内容
当社子会社に対する業務改善命令に関するお知らせ
医薬品製造業の業務改善
①違反事項の原因究明、改善及び関係法令の遵守
②法令遵守体制の抜本的改革及び組織体制の再構築
③是正措置及び再発防止策に係る改善計画の策定
ざっくりまとめると
業務改善命令の内容は
- 原因究明
- 製造体制&組織改革
- 再発防止策
こんな感じですね!
原因究明と再発防止策は
今後報告書にまとめられるのでしょう!
報告書確認して
追加いたします
製造体制と組織改革は
管理にかかわる人の雇用も必要でしょうから
かなり難航しそうです……
昨今の製造違反の煽りで
業界全体としてQAの人員が
足りていないと聞きますからね…
かなり難しいですが、
これをクリアできないと
製造再開は難しい品目も出てきそうなので
ニプロ本体にも頑張ってもらって
なんとか確保して欲しいところです!
どうか頑張って……
まとめ
ニプロファーマの業務改善命令を
細かく確認してみました!
今後、顛末の報告書が出てきましたら、
改めて詳細を確認していきたいと思います。
乞うご期待