医薬情報担当者(MR)は、
医師や薬剤師などの医療従事者を対象に
医薬品の情報を提供&収集することが役割です。
しかし、最近ではMR不要論が
コロナ禍後、強くなっています。
直接の関連はありませんが、
多くの医薬品メーカーが
MRの数を減らしている現状もあります。
あなたも早期退職やポジションクローズなど
リストラ関連の話題を聞いたことが
あるのではないでしょうか?
MR不要論自体は
ポジティブではない話題だったので
コレまでは深く考えることを避けてきました。
ただ、このブログは
MRの何たるかを紹介する
という使命も持っておりますので
まあずっと逃げてられないよね
ということで深く考えてみます!
この記事では、MR不要論についての概要と
その背景、そしてMRの役割や必要性について
MRが提供する情報の変化という
視点を加えて解説します。
MR不要論とは
MR不要論とは、医療従事者から出ている
「医薬品メーカーからの情報は不必要」
という意見です。
そのまんまです。
ただMRを立ち入り禁止にするとか
MRからすると過激な対応をとる病院もあるので
MRには生きにくい世の中になりました。
MR不要論の理由には
よくこんなことが言われます。
- 医療従事者が医療情報を
入手する手段が多様化したこと - MRからの情報が偏っている、
あるいは正確性に欠ける場合がある
との認識が広がったこと - MRが営業目的で訪問している
という認識があること
ただコレは表向きの理由で、この他にも
- 接待ができなくなった
- 販促品がなくなった
という俗物的な話もあったりします。
(実際言われたことありますw)
またMRの提供できる情報が減ったというのも
大きな原因の一つです。
- MRがパンフレットの話しかしなくなった
- 説明会も決まったスライドしか使わなくなった
- 学会情報も積極的に持ってこなくなった
といったように情報の正確性を追い求めるあまり
企業が萎縮してMRの提供可能な情報を絞ったことも大いに関連しています。
背景は
『情報提供ガイドライン』の
記事で詳しく紹介しています。
インターネットやSNSの発達で
医療関係者の情報収集能力が上がる中で、
MRが提供できる情報が減少し
医薬品に関する情報格差が埋まる、
もしくは逆転したと感じた医療従事者から
MRによる情報提供が不要であるとの意見が
出てきたわけです。
パンフレットの話しか
できないなら
GoogleかAIでいいって
話も出るよね
MRの役割や必要性
少し横道にそれますが
提供できる情報が限られていく中で
MRの価値を再考するために
MRにできる情報提供活動を振り返ってみます。
新薬発売時の迅速な情報拡散
まず最初に思いつく医療従事者にとって
非常に重要な情報といえば、
新薬の新発売時の情報です。
忙しい医師にとって、
新発売されて間もない新薬の
特徴や効能、副作用などについて
正確な情報を知ることができるのは
MRからの情報が一番早いケースが多いです。
特に医師にとって専門外の情報だと
この傾向は強くなります。
耳の早い情報収集スペシャリスト
医師もいらっしゃいます
実際問題、MRの良し悪しで
情報拡散&浸透スピードは明らかに違います。
これは間違いないです。
誰が否定しても断言します。
新薬の立ち上げが失敗すると
そのエリアでは長い間収益が見込めなくなります。
立ち上げに失敗して正確な使用がなされないと
本来救えていた患者さんが
救えないままになってしまいます。
この新薬情報の
スピーディな拡散と浸透は
今も残るMRの
最も重要な仕事であり
醍醐味です。
安全管理情報の収集
有害事象や副作用情報の収集も
MRの重要な責務です。
基本的に製薬社員は
常に報告義務を負っていますが
最も医療現場に近いMRがその最前線です。
内容によっては発見の遅れが薬害に繋がります。
派手さはありませんが重要な仕事です。
医療課題の個別対応
医療従事者とMRのコミュニケーションは、
医療現場の課題解決につながることもあります。
MRは医療従事者と直接対話することで、
医療現場の問題や課題を把握し、
それに対する解決策やサポートを
提案&提供することができます。
一昔前は
クリニックと病院の
連携を促す講演会の運営は
MRの重要な業務の一つでした。
ただ年々こう言った会の
運営は規制強化により
難しくなっています
MR不要論への対策
医療従事者からのMR不要論に抗うために
製薬メーカーはいくつか取り組みを行っています。
(結構会社によって違いはあります)
例をあげると
- MRが提供する情報の正確性や客観性を向上するための研修や教育プログラムの実施
- デジタル化による情報提供の強化(Webサイトやアプリ、ウェビナーなどの活用)
ただ①は表向きの名目上
こういった内容で書かれていますが、
会社の利益を守るため
という側面も強いです。
というのも医薬品の使用方法を示した
添付文書以外の使用をMRが推奨した場合
たとえ根拠があったとしても、
会社が莫大な罰金を払うリスクあります。
誇大広告ってやつです!
近年の罰金で印象的なのはこの事件です。
アメリカからGSKが
30億ドルの罰金を受けました!
30億ドルですよ!
とんでもない金額です!
MRの活動に制限をかけないと
会社によっては一瞬で吹っ飛ぶ
罰金を取られる可能性が出てきたので、
各社本気で研修を行なっています。
表向きは顧客(医療者)指向ですけど
本質的には会社指向の部分があるんですよね。
この中間の
ちょうど良い対応ができず
医療者の求める情報を
十分に提供できないことが
2020年代前半のMRが抱える
問題だったりします。
二つ目は
『MRからの情報提供が難しいなら
医師から正確な情報発信をしてもらおう!』
というコンセプトで対応されています。
当初はこちらはうまくいっていましたが、
多くのMRが活用した結果
- 乱発による飽和
- こちらもコマーシャルとして
独自に規制し始める
ということが各社で起こり
顧客のニーズを満たしにくくなってきています。
こんな状況ですが、MRは知恵を使って
医療者のニーズと自身に出来ることを
擦り合わせて最善の対応を繰り出しています。
現代のMRは
顧客ニーズを満たすため
深い業界&自社制度の理解が
必須です。
MRの責任と不要論
色々と頑張っているメーカーですが
当然MRもいろいろいますので、
その対応も千差万別です。
当然、優秀なMRもいれば
イマイチなMRもいます。
基本的にはMR活動には
正確性、客観性、倫理性等を求められますが
その対応も(研修を行なっているとはいえ)
当然様々です。
正確性、客観性、倫理性を
表す活動の具体例には
- 情報提供において、正確性や客観性を重視し、製品の効果や副作用について適切な情報を提供すること
- 患者や医療従事者に対して、製品に関する誤解や誤った期待を与えるような情報提供を避けること
- 医療従事者とのコミュニケーションにおいて、倫理的な行動を守ること
- 医療従事者が治療に必要な情報を得ることができるよう、MRの提供する情報が医療従事者にとって有用であることを確認すること
こんな内容が考えられますが、
これらのことが守られない場合、
MRによる情報提供は
正確ではなく、主観的であり、
倫理観に欠いた行動になる可能性があるので
医療従事者にとって負担となり
治療にも悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
まぁ難しいんですけどね…
ざっくりいうと無駄な時間を
使わせるな&迷惑かけるな!
ってことです…
一定数で質の低いMRがいると仮定すると
そういったMRが担当したがために
MR全てが、情報量が少ない&有害な情報を
持ってくると判断され
MR不要論を唱えている医療従事者が出てくるのは
ある意味仕方がないのかもしれません。
MR不要論に対する反論
一方で、MR不要論には反論もあります。
情報が不足していくリスク
まず第一にMR不要論が進みMR数が減少すると、
医療従事者が必要な情報を得にくくなる
可能性があります。
薬に関しては、
製造元所属のMRが持つ情報は当然多いですし、
医薬品情報以外にも、医療経営情報など
MRが提供できる情報は多岐にわたります。
MR不要論を唱える場合には、
不足する情報について
どのように補完するか
考える必要は絶対にあります。
また、情報収集能力が
高くはないDrも少なからずいます。
忙しく専門外に手が回らなかったり、
デジタルが苦手だったりという理由で
MRに情報を頼る顧客はまだまだいます。
ここに対するフォローも
絶対必要です。
MR来るな!という医療機関にて、
驚くべき薬の使い方がされていた…
という経験をしたMRは少なくないです。
田舎に行くとDM患者の
アマリール3mgの単剤治療とか…
ありますから…
新薬の開発費稼ぎ
新しい医薬品を開発するためには
多大な投資が必要です。
定期的に新薬を発売するためには
2000億円/年必要だと言われて久しいです。
近い将来3000億とか言われそうな
雰囲気すら感じています。
その開発費用を回収するためには
販売量を確保する必要があります。
新薬開発を促進する資金を得るためには、
MRによる医薬品のプロモーションは必須です。
MRは医薬品メーカーにおいて
数少ない利益を直接産める職種なんです。
ただ紹介した通り、
MRによる情報提供が
適切に行われない場合、
新薬の副作用などに関する
情報が不十分なまま
処方されると言ったリスクや
誇大広告のリスクを
有するのは
言うまでもありません。
医療従事者による情報の選別能力も必要
これはMRである私がいうべきでは
ないかもしれませんが、
MRによる情報提供を受ける医療従事者には
情報の選別能力が
当然のように求められる時代になりました。
昨今の情報提供ガイドラインで
大幅に是正されてはおりますが、
営業という性質上、
MRから提供される情報には、
製品の優位性が強調されたり、
情報の不足や偏りがある可能性は常にあります。
この点を踏まえた上で、
提供された情報の
評価&必要性の選別を
していただけると幸いです。
MR不要論ではなくMR過剰論
コレは個人の意見ですが、
MRは不要ではなく
過剰になっているのだと考えています。
そして業界全体としても
同じ考えなのだと思います。
閲覧用を除くと半数以上が
過剰と判断していますね!
現在、先発医薬品業界は、
抗菌薬、ARB、DOAC、スタチン、DPP4i
といった幅広い医師が使う医薬品から
がんや免疫、希少疾病といった
スペシャリティと言われる
少数の専門医師が使う医薬品開発へと
変化していってます。
結果MR数が供給>需要へと傾き
供給過多の歪みを受けた医療者から
不要だという意見が出ているのでしょう。
企業の立場で見れば
新薬発売時や副作用収集などで
必ず必要になる職種ですので
リストラで調整されながらも、
新薬発売の必要なタイミングで
雇用が続けられると考えています。
業界全体として
適正数に落ち着くまでは
下落トレンドは
変わらないでしょうケド
MRの業務はAIで代替できるのか?
そして最近トレンドのAI
これでMRの業務が代替できるので
MR不要論は加速するのでは?
という意見もあります。
ここに関しては
個人の意見ですが
代替される部分も多くある
と考えています。
特に少しだけ薬の内容を聞きたい
とかの顧客からの要望レベルの対応は
かなり代替されるはずです。
実際、同時に行ったアンケートでも
必要不要と比べると
明らかに代替可能という反応は
多いです。
ですが、積極的に
顧客に提案を持って行ったり
気づかなかったニーズを膨らませる
本社ができることに気づかせる
などなど、
要求があって始めて動く
AIではまだ難しそうな仕事も多いので
代替不可能なレベルの仕事も残りそうです。
ただMRの職能が削られるのは間違いありませんし
このアンケートをまともに受けるなら
半数の人はMRの業務はAIで可能
=過剰とも取れるので
MRは今から半数くらいには
減るのかもしれません。
まとめ
MR不要論には、
医療従事者にとって
必要不可欠な情報が得られなくなる可能性や、
新薬の導入が遅れる可能性がある
という反論がある一方で、
MRによる情報提供が適切に行われない場合、
医療従事者や患者にとって
悪影響があることも事実です。
MR不要論には賛否両論がありますが、
私は過剰論を推しています。
しかし、より良い医療の実現のために、
MRによる情報提供のあり方を見直す必要は
常にあるでしょう。
MRの質と量の歪みが
正されるまでは
医療従事者や患者の
立場に立った
情報提供を行うことを
より心がけていきたいと
改めて考えさせられました!