みなさんお疲れ様です。チクチクです。
今回はほとんどのお薬関係者が
知っているであろう
オーソライズド・ジェネリック
について取り上げます。
略してAGですが、当たり前の知識すぎて、
意外とちゃんと考えたことない…
って人多いと思うんです。
特に先発品しか扱わないメーカー担当者だと
実は詳しく知らないって人が多そうです。
なので本記事では
- オーソライズドの意味
- AGの分類とその見分け方
- AGの発売時期
- AGの薬価
といった情報を
網羅的に紹介します
オーソライズドの意味って?
そもそもなんだけど、
オーソライズドって
どういう意味よ???
このブログでは言葉の定義を
大切にしていますからね!
スペルで書くと
Authorizedらしい
Authorized???( *`ω´)
Authorizedって調べると
認定の、検定済みの、権限を授けられた
引用:weblio英和辞典
という意味が出てきます。
つまり先発品会社に
認定された後発製品ってことですね!
結構難しいのね!
薬を使うメイン消費者の
高齢者を考えると
『認定後発品』でよくない?
って本気で思うわ!!
認定中古車とかあるしイメージ付きやすそうなのにね。
言葉選びのセンス…
AGにも種類(クラス)がある
案外知らない人が多そうなのが、
AGにも種類があるという点です。
AG=先発品と全く同じ
と思っていると
得意先で恥をかくかもしれません。
AGにはAG1、AG2、AG3
というクラスがあります。
こちらの表をご覧ください
AGクラスの分け方
ざっくりと
原薬と工場、技術の違いで分けられています。
詳しく見ていきます。
AG1
まずAG1です。
これは頭から尻尾の先まで同じ商品です。
違うのは名前と薬価、箱等の包装のみです。
THE・AGといえば
AG1と言えるでしょう!
もっとも安心な後発品という意味で
異論はないかと思います。
【小噺】
ただ、
正直これには思うところがありまして…
ここまで同じなら
先発品の薬価を下げれば良くない??
って話です。
先発→AG1の切り替え作業って
意外に手間かかっていると思うんですよ。
本質的には
全く同じものに切り替わっている
にも関わらず、細かいながらも
膨大なコストがかかっています。
- 承認作業
- 製薬会社の営業
- 見積もり
- 処方時の医師&薬剤師間の調整
- コンピュータ設定
- 患者への処方指導
- 患者自身の変化への対応等々
ざっくり考えただけで
こんなに出てきます。
なら薬価を下げて対応するだけで、
これらのコスト0にできるのに…
と思います。
正直
無駄なコストに思えて
仕方がないんですよ。
無駄なところに
リソース割かせるのは
やめるべきですし
行政は本当に考えた方が良いです。
AG2
AG2は工場と製造技術が異なります。
ざっくり作り手が違います。
原薬や製法等の材料的な部分は同じです。
わかりやすくチャーハンに例えると
真似するチャーハンと
同じレシピと食材を揃えて、
別の人が作ったチャーハンが
AG2です。
あれ?それ別物じゃない?
でもプロの料理を
レシピと食材同じにして、
プロが再現すれば
ちゃんとした物になるじゃん?
なるほど
AG3
続いて、AG3です。
こちらは工場、技術の他に原薬も違います。
添加物は同じなので、
AG2の時と同じく
チャーハンに例えるのならば
チャーハンの
レシピと香辛料等の食材は一緒
ですが、
主体となる米と
作り手が違う感じですね。
あ、これは別物感あるわね
米が違うと、パラパラ感とか
変わりそうですよね。
AG3の原料が違うっていうのは
それなりのリスクかな。
なお、AG2、AG3 は承認時に
一般的なジェネリック医薬品と同じように
生物学的同等性試験を行うことで、
品質を保証しています。
まぁ小林化工のように
歪められる可能性はありますので、
AG1とAG2、3には
大きな壁があるといえますね。
逆にいうとこの壁を埋めるだけの
歴史的信頼感や技術を持っている会社が
これから残るのかもしれません
AGの各クラスの見分け方
あれ?でもAG1,2,3を見分けるって
どうすればいい?
一般の人はどうやって調べればいいんだ?
こんな疑問がわいてきました。
実際Twitterのフォロワーさんの中にも
同じ疑問をお持ちの方がいらっしゃいまして,
その方とやりとりさせていただき、
これ良さそう!と思える方法を
見つけることができました。
そこでここからは
AG1、2、3を
2ステップで見分ける方法
上記内容をご紹介します。
よりいい方法がございましたら教えてください!
追記させていただきます
薬物動態→原薬チェックの2ステップ法
準備するものは
インタビューフォーム&添付文書です。
実際には
薬物動態→原薬の2ステップで
チェックを行うだけです。
超簡単です!
多分コレだけで
わかる人もいますよね。
実際の見分け方を紹介します。
AG1の見分け方:薬物動態を確認
AG1の見分け方は簡単です。
添付文書またはインタビューフォーム(IF)の
薬物動態の項目を確認すればOKです!
近年発売された
AG1の代表である
ファイザー製のセレコキシブと
日医工ジェネリックを例に
確認します。
左がファイザー
右が日医工です!
ファイザーには
標準薬剤の記載がない!!!
そうAG1には
標準治療薬の記載がないんだ!
なるほど!
これならすぐわかるわね!
でもどうして?
この理由は簡単でして、
AG1は生物学的同等性試験の必要がないからなんです。
AG1は先発品と
頭から尻尾の先まで同じ商品です。
名前だけが変えられて売られています。
そのため、
”先発品と全く同じ効果が期待できますよ!”
と証明する生物学的同等性試験が
必要ありません!
まぁ名前違うだけだからね
結果、試験が免除され
薬物動体のグラフには
先発と同じものが
使用されます。
ただこの方法も完璧ではなく
AG1であってもなんらかの理由で
比較試験を実施している場合は
標準製剤の記載が付いている様です。
ランソプラゾールOD錠「武田テバ」は
後述するIFを確認するとAG1ですが、
薬物動体に標準製剤の記載があります。
ただ、標準製剤がない場合はAG1確定ですので、
まずは薬物動態を確認して
AG1とその他の鑑別をするとよいです。
AG2とAG3の見分け方:IFをチェック
AG2と3を分けるのは
原薬が同じか、違うか?という一点だけです。
なので原薬が同じか否か?
これをチェックできれば
AG2とAG3を鑑別することが可能です。
これを調べるにはインタビューフォームの
製品の開発の経緯
または治療学的・製剤学的特性を
チェックすればOKです。
開発の経緯と治療学的・製剤学的特性
どちらに書いてあるかは
会社によって違いますが、
どちらも隣り合って記載されているので
すぐ見つかります。
今回はカンデサルタン『あすか』を題材に
実際に見てみます。
まずはAG1との鑑別のために
血中濃度をチェック
引用:カンデサルタン錠「あすか」添付文書
標準製剤の記載があるのでAG 2か3なのは確定ね!
続いて
製品の治療学的・製剤学的特性を
みてみます。
2.製品の治療学的・製剤学的特性
1) 日本初のカンデサルタン製剤のオーソライズド・ジェネリック※(Authorized Generic;AG) である。(※先発医薬品メーカーから特許使用許諾を受けて製造されるジェネリック医薬品)
引用:カンデサルタン錠「あすか」インタビューフォーム
2)原薬、添加物及び製造方法は「ブロプレス錠」と同等である。
3) 「効能・効果」は、「ブロプレス錠」と同じ「高血圧症」、「腎実質性高血圧症」及び「慢性心不全」である。
4)重大な副作用として、血管浮腫、ショック、失神、意識消失、急性腎障害、高カリウム血症、 肝機能障害、黄疸、無顆粒球症、横紋筋融解症、間質性肺炎、低血糖が報告されている(頻度 不明)。
原薬が同じ
と記載されています!
そして製造場所の記載が
ありません。
なので
カンデサルタン錠「あすか」は
違う工場で作られた
原薬が同じAG2と考えて
差し支えないでしょう。
ちなみに
AG1の薬剤の場合は
こんな感じで記載されます。
1.開発の経緯
セレコキシブ錠 100mg「ファイザー」及びセレコキシブ錠 200mg「ファイザー」は、アステラス 製薬株式会社が製造販売しているセレコックス錠 100mg 及びセレコックス錠 200mg と有効成分 (原薬)、添加物、処方、製造所、製造方法、効能・効果、用法・用量、規格及び試験方法が同 一である後発医薬品(オーソライズド・ジェネリック医薬品:AG)であり、ファイザー株式会 社が平成 26 年 11 月 21 日付薬食発 1121 第 2 号に基づき承認申請を行い、2020 年 2 月に承認を 取得した。
引用:セレコキシブ錠100mg「ファイザー」インタビューフォーム
製品の治療学的・製剤学的特性
(1)本剤は,標準製剤と原薬,添加物,製造方法,製造所が同一のオーソライズドジェネリッ クである。
引用:プソフェキ配合錠「SANIK」
整理すると
- 原薬
- 添加物
- 製造方法
- 製造所
ポイントとなるのはこの4点で、
以上のうち足りないものが何か判断することで
AG1-3まで判断することができます。
あれ?なら薬物動態を
確認する必要なくない?
確かにその通りなんだけど、AGの鑑別なんて、
ほとんど行わないよね。
だから
4つ全て覚えておくのは
難しくない?。
今日紹介した方法だと
薬物動態→原薬チェックの
2ステップ!
あー確かに楽かも…
場合によっては早く発売できる
AGのメリットとして、
他競合のジェネリック会社よりも
早く発売できることがあります。
ちなみに
特許満了が再審査期間より長い場合に可能です。
基本的なイメージとして、
再審査期間中は全ての他社は
何もすることが出来ません。
この期間は
医薬品を評価している期間でもあるので、
ジェネリック会社は
承認申請をすることすら出来ません。
国のルールなんで、
先発会社がOKって言っても
審査中の薬を
勝手に他社製造するなんて
けしからん!!
と怒られてしまいます。
しかし特許は違います!!
特許に関しては
特許者の許諾があれば、
申請を出すことが出来ます。
なので、
ねぇねぇ再審査期間は
終わっているし
承認申請出させてよ!!
発売は特許満了後にする?
んでロイヤリティ払う?
ならレシピ教えるし
認可するよ?
オッケー
AGとして出すわね!!
こんなことが可能になります。
つまり、先発会社に認められていない会社は
特許満了後に承認申請しますが、
AGを作る会社は
それより早い段階で承認申請を行えます。
ジェネリックの薬価収載は
6月もしくは12月ですので、
非AG会社より
半年早く承認申請を出すことで
半年早く発売することが出来ます。
営業的には半年ってかなり大きくて、
長期的にシェアを磐石にするには
かなり十分な時間です。
なお特許期間満了が
再審査期間満了より早い場合は
このような交渉が
行えないので、
全てのジェネリックが
同時に発売されます
AGの薬価
2021年現在、後発品の発売時の薬価は、
原則として先発品の0.5倍です。
ざっくり半分にされます。
しかしながら、
経口薬で10品目以上
同時収載される場合は0.4倍となります。
めっちゃ安いですよね。
そして、
先程紹介した先行発売が
裏目に出る場合もあります。
というのも人気の経口薬の場合、
10種類以上多く出ることは少なくありません。
そんな中、先行発売した場合
AGは先発品の0.5倍の薬価
非AGは先発品の0.4倍の薬価
こんなことが起こってしまいます。
よくAGは高いから…
と言われることがありますが、
それにはこんなカラクリが
あった訳です。
【小噺】
たった10%の違いですが、
安く売らされる非AG側からすると
薄利多売の後発品ビジネスにおいては
結構大きな違いになるでしょうし、
AG側からするとシェアを
『どうすることもできない薬価』だけで
奪われる危険性があるので、
双方にとってデメリットになってる
気がするんですよね
そのうち、
何らかの対策が
取られそうな
歪みを感じています。
なお、もう少し詳しい薬価制度については
関連記事をご確認ください。
関連記事:後発品の薬価算定ルール解説
まとめ
いかがでしょうか?
- オーソライズドの意味
- AGの分類とその見分け方
- AGの発売時期
- AGの薬価
等々について
ご理解が深まっていればうれしいです。
個人的にはこれからは、
日医工や小林化工が起こした
2021年の供給不祥事により
工場への不安が拭えず
少々高くてもAG1がシェアをとっていく
構図になるような気がしてなりません。