後発品の薬価の決まり方って知っているでしょうか?
製薬企業に勤めていても
細かい薬価ルールって知らないって言う人もいますよね。
または昔の薬価ルールでは先発の70%の薬価だったので、
そのまま覚えている人もいますよね?
実はよく知らない…
そんなあなた…
10分だけ立ち止まってみませんか?
10分間で
後発品の薬価算定ルールが
完璧にわかります。
・バイオシミラーは先発の70%、
・たくさん出たら、さらに−10%引き
薬価改定の方法は
本文をご確認ください!
後発品の薬価算定ルール
それでは実際の薬価算定ルールを見て行きます。
なおこれから紹介するルールは2021年8月のものです。
また納入価による薬価差益の話も少々登場します。
納入価等に関しては関連記事:医薬品卸の談合問題にて解説しておりますので、気になる方は先にご確認ください。
後発品の薬価算定は初めて発売される後発品と
2番目以降に発売される薬剤で異なります。
新発売時の薬価算定(初めて発売される後発品の場合)
初めて発売される薬剤の場合は、
基本的に新薬の50%の薬価がつきます。
100円の薬の場合50円です。
ただし同時に発売する会社が10社以上になるような製品の場合、これが40%に下がります。
ちなみに2014年4月までは70%(低下時60%)でしたが、
引き下げられ2018年より現制度に変更されています。
さらにひとつ注意点がありまして、
新薬創出加算対象品目に関しては
加算を返還した薬価を用いて算定されます。
新薬創出加算は特許期間中の新薬の薬価を維持する制度です。
そのため、対象になった製品は薬価が本来の価格より高止まりしています。
通常、特許満了後の薬価改定にて加算の返還を行い一気に薬価が引き下げられます。
加算がなかった場合の薬価に戻るわけです。
この戻った薬価の50%ないし40%が後発品の薬価ですので、
加算品目の薬価はとんでもなく安くなることがあります。
2020年の新薬創出加算品ですと
セレコックスの後発品セレコキシブが発売されました。
その薬価を確認すると…
- セレコックス100mg:69円
- 後発品:19.6円(71%OFF)
- セレコックス200mg:106.3円
- 後発品:30.2円(71%OFF)
余談ですが、ここまで安いと経営上の問題から
採用を見送る病院や薬局が出てきます。
100人の患者にセレコックス100mgを処方していた場合
1日2錠の薬剤ですので6,000錠の薬が処方されます。
69円の薬が6,000錠使われ414,000円の金額が動きます。
医薬品卸から薬局への納入価が10%引きの場合
薬局の売り上げは41,400円です。
さらにここから消費税が引かれます。
これが19.6円になってしまうと
117,600円に取引額が減ります。
納入価が10%の場合売り上げが
11,760円に減ってしまいます。
つまり差額は41400-11,760ですので
約30000円の売り上げ減少です。
同様の売り上げを出すためには
後発品の納入価を35%以上引いた値でなければ
売り上げが減ってしまいます。
なお先発品の納入価が安くなれば安くなるほど
後発品の納入価も安くせざるを得ません。
先発15%引の場合、薬局が同様の売り上げをあげるためには52%引きの納入価が必要です。
19円の薬を10円で卸してもらってやっと同じ売り上げがカバーできます。
とは言い切れないところが辛い。
ほとんど売り上げ無くなるのに
よくやるなぁとは思います。
ただ、薄利多売体質が原因で
日医工や小林化工が
問題を起こしたので
変わっていくかもしれません。
新発売時の薬価算定(既薬価収載の場合)
既に薬価収載されている2番手以降の
発売の後発品は簡単です。
そのタイミングで
最低価格の後発品と同価格に設定されます。
高い薬価はもらえないのね…
薬価改定ルール
続いて薬価改定ルールです。
後発品の薬価改定ルールは
まず発売されている同じ成分の後発品を
以下ルールにしたがって、3つの群に分けます
- 最高価格の30%を下回る算定額となる後発品を一つの価格(加重平均値)として収載(統一名収載):低薬価群
- 最高価格の30%以上、50%を下回る算定額となる後発品を一つの価格(加重平均値)として収載:準低薬価群
- 最高価格の50%以上の算定額となる後発品を一つの価格(加重平均値)として収載:その他の後発品群
3つの群に分けて、その加重平均で薬価を決めるというものだよ。
低薬価群にまとめられて、
その加重平均が薬価になる!
つまりめちゃくちゃ安くなる!!
50%以上の価格で売られていれば、
その他後発品に張り付いて
薬価の低下が抑えられるんだ。
安い薬でまとめられて、
どんどん安くなるわけね!
ところで加重平均ってなに???
加重平均
加重平均についても紹介しておきます。
名前の通り、
大事なものに重みをつけて
平均を出す方法です。
納入価と売り上げ数量で計算できます。
今回仮にキカヌサルタンという薬があって
納入価と数量が以下条件の場合を計算してみます。
薬剤名 | 納入価 | 売上数 |
---|---|---|
キカヌサルタン『アマテ』 | 30円 | 100 |
キカヌサルタン『ツクヨ』 | 40円 | 200 |
キカヌサルタン『スサノ』 | 50円 | 300 |
普通に納入価だけで平均を出してしまうと
(30+40+50)/3ですので、40円です。
ですが、これは売り上げ数量考えず、
市場を無視していることは明白ですよね!?
そこで売り上げ数量を考慮した加重平均を用います。
この場合の計算式は
(30*100+40*200+50*300)/600
※売上数の送料100+200+300=600
この式で計算されます。
結果は26,000/600=43.33…
バイオシミラーの薬価算定
後発品は一律50%引き、
10社以上出た場合には60%引き
と紹介しましたが、
バイオ医薬品の後発品である
バイオシミラーに関しては先発品の30%引き、
10社以上発売された場合は40%引きと優遇されています。
これには理由がありまして
通常の後発医薬品は
健康成人を対象にした
生物学的同等性の試験の実施のみで発売できます。
しかしバイオシミラーの場合は、
ここからさらに患者を対象にした臨床試験を実施し、
先行バイオ医薬品との同等性/同質性を証明しなくてはなりません。
厳密には同じものではありません。
なので臨床試験が必須です。
薬価面でも優遇されています。
余談:先発品の薬価特例引き下げ
この他にも後発品関連の薬価ルールとして
後発品への置換えが進まない先発品の薬価特例引き下げ
があります。
後発品の発売から5年経って
7割以上後発品に置き換わってないと、
先発品がペナルティを受けて
さらに薬価が下がります。
後発品に変わらないように抵抗して
成功するとペナルティを受けるの?
後発品がでたら、
もうどうしようもないわね!
まとめ
後発品の発売時の薬価のつき方、
薬価改定時の計算方法、
バイオシミラーの薬価算定等に関して紹介しました。
なんとなくお分かりいたけたのではないでしょうか?
バイオシミラーは先発の70%、
たくさん出たら、さらに−10%と
覚えておけばOKです。
見に来てもらえると幸いです(⌒▽⌒)