近年の診療報酬改定や薬価改定の中で
ドラックラグが再発していいのか?
私も当然同じ考えなのですが、
ただ少々情報量が多くなってきて、
他国はどうなの?
実際、医薬品市場の魅力はへっているの⁇
こういわれると少々自信がなくなってきました…
そこで今回は
日本の医薬品市場の魅力は減っているのか?
- え?じつはよくわかっていない
- 日本の製薬業界は大丈夫なの?
- リスクがあるなら企業選びのポイントは?と
助けになればいいなと思います。
日本の医薬品市場の魅力は低下している
ノボの社長もこんなことを言っています。
「これまでは、日本の見通しが明るくなくても、革新的な新薬を導入してきた」と述べ、これが結果として業績の伸びにつながっているとの見方を示した。そのうえで、「しかし、継続できるかは様子を見ないといけない。近隣諸国よりも、日本の優先度は落ちてくるかもしれない」と指摘。業界団体の意見を引き合いに、日本市場の魅力が薄れ、“セカンド・ランク”となりつつあることは業界全体の統一した見方であると主張。「薬価政策をどうするか、政治家を説得して何とかしなければならない。日本がドラッグ・ラグに再び陥ることを避けなければならない」と述べた。
理由は主に3つ
- 世界市場は拡大するも日本の市場規模は横ばい
- グローバルに対するシェアは縮小している
- ランキングも下降し続けている
世界と比較して相対的に魅力が落ちている。
特に外資にとっては、うまみのある市場ではなくなってきている。
市場規模は横ばい
日本の市場規模は2016年からほぼ伸びていないという現状があります。
まずはこちらのグラフをご覧ください!
コチラは世界の医薬品市場の推移です。
2010年から2019年までドルベースで1.42倍成長をしています。
中国:2.58倍
ドイツ:1.22倍
フランス:0.91倍
イタリア:1.25倍
ブラジル:1.27倍
英国:1.44倍
スペイン:1.10倍
北米:1.25倍
AAA(除く日中):1.64倍
その他欧州:0.91倍
オーストラレーシア:、オーストラリア大陸・ニュージーランド北島・ニュージーランド南島・ニューギニア島およびその近海の諸島(インドネシアの領域を含む)を指す地域区分
日本は市場が全く拡大していません。
日本は10年以上
全く成長していない市場なのです。
今後の調査項目にしてみます。
グローバルシェアとランキング
こんな状態ですので
グローバルシェアとランキングも
低下の一途をたどっています。
まず世界シェアは10年弱で
11.6➡6.9%
と約半分になっています。
2010年以降の日本市場の世界に占めるシェアを見ると2011年に11.6%でしたが、それ以降低下を続け、2018年には6.9%となっています。
製薬協HP:医薬品市場における日本の存在感
世界におけるランキングも
2013年に中国に抜かれ、世界3位に後退。
その後、差は開き続け2019年では
中国市場は日本の1.61倍にまで成長しています。
ちなみに2013年の段階では
4位のドイツの2.04倍の市場を持っていますが
2019年の段階ではドイツの1.67倍まで縮小し
近い将来ドイツに逆転されるといわれています。
日本の医薬品市場は2026年にドイツに抜かれ世界4位に後退する――。米IQVIAが今月発表した最新の世界市場予測で、こんな見通しが示されました。22~26年の日本市場の年平均成長率はマイナス2%~プラス1%となり、先進10カ国の中で唯一のマイナス成長が見込まれています。
日本の医薬品市場、2026年にはドイツに抜かれ4位に「毎年改定がイノベーション相殺」
ドイツの人口は8300万人日本の人口の約7割です。
2020年のGDPも
ドイツが3.8兆円、日本が5兆ドル
と約75%です。
にもかかわらず
2026年には市場が逆転されるわけです。
魅力低下を引き起こしている原因
なぜこんなにも市場が縮小しているのか?というと理由は明白で
ひとえに強力な薬価抑制政策によるものです。
ブログ内で何度か取り上げてきましたが
特例再算定や毎年薬価改定など、
強力な薬価抑制政策が2016年前後から吹き荒れています。
(これらの政策が市場の伸びを打ち消しています)
このほかにも
• ジェネリック医薬品 80%目標
• 最適使用推進ガイドラインによる使用介入
• 費用対効果の試行的導入
等によって薬価は抑制されています。
特に特例再算定と毎年薬価改定は
企業の収益化の予想を立ちにくくしており、
日本の魅力を低下に大きく貢献しています。
(皮肉です。)
実際にアストラゼネカ社の社長も以下コメントをしています。
日本市場については、毎年薬価改定の導入や調整幅の議論などに触れ、「確かに日本市場は予測が難しい。不確実性が高まるほど、投資をするうえではどんな企業でも躊躇する」
アストラゼネカのように企業体力がある会社は躊躇しても投資継続ができますが
体力のない中小やベンチャーは日本市場が
早期に投資する魅力を持っているとは言いにくくなってます。
日本は市場も成長してないし
今後も伸びなさそうな上
発売しても薬価下げられるし
開発後でもよくない?
と判断され始めています。
余談:22年度の薬価改定でも改悪あり(主観)
余談ですが22年度の薬価改定でも
ばっちり魅力を失う改定を行っていまして、
それが原材料の費用の開示度が50%未満の品目には
薬価の加算を適用しないというものです。
開示度が50%未満の品目については、
現行の加算係数は0.2でしたが、
それが0に引き下げられます。
つまり他でどれほど加算を稼いでも
原価開示が基準に満たないと0が掛けられますので
打ち消されてしまいます。
2022年4月にウィフガードという重症筋無力症の薬が薬価収載されましたが
最初にこの制度変更の犠牲になっています。
「ウィフガート点滴静注」(エフガルチギモド アルファ)は、胎児性Fc受容体を標的とした抗体フラグメント製剤。薬価は原価計算方式で算定され、有用性加算II(5%)と市場性加算I(10%)がついたが、原価の開示度が50%を下回ったため加算係数がゼロとなった。
「ルマケラス」「ウィフガート」など8新薬、20日に薬価収載…ブリストルの抗BCMA CAR-Tも|トピックス
同剤は『十年から数十年に一度の稀有な製品』『売り上げ予想1兆円超』という革新的な新薬ですが
日本においてその革新性が薬価として評価されることはありませんでした。
加算がないのであくまで原価算定で薬価が決まっています。
ちなみに開発元のアルジェ二クスのストレンガー社長は
以下コメントを述べています。
『補正加算がゼロ算定される最初の製品になってしまった。だが、製造原価は企業秘密だ。決して開示できない』
引用:「ウィフガート」、全世界1兆円予測も アルジェニクスCEO「IgG免疫疾患は100種」、適応拡大が鍵
製造メーカーとしては当然のコメントですよね。
何より薬の価値は
開発によって得られた『情報』であって
製造コストではありません。
極論、小麦粉であっても特定の条件下で重篤な疾患に効くのならば
評価され薬価を受けるべきです。
それがイノベーションを評価するというものです。
日本の薬価制度は『国民負担の軽減』という免罪符のもと
前時代的な方向に進んでいるといえます。
このような薬価の改悪には欧州製薬団体連合会も当然懸念を示していまして
「革新的な新薬の開発や国内導入等に対して与える影響が懸念される」とコメントしています。
日本にやってこなくなるよ?
と警告を出しています。
企業選びのポイントは?
ここまで日本の市場が厳しい!
という話をしてきましたが、
そうすると就活生の疑問としては
どういった会社を選ぶべきなのか…
こんな疑問が沸くと思います。
当然、働く環境として選ばないのも有効な手段ですが
それでも働きたいという未来の仲間に対して
少々個人的な主観が入りますが、
現状の企業選びのポイントを考えてみたいと思います。
結論から述べますと
- 海外販路を有しているか?
- 研究開発費が潤沢にあるか?
この2点に尽きると考えています。
日本だけで商売している会社は
先細り&締め付けが強化され続ける市場の中
開発費を潤沢に用意することができません。
開発できない➡新薬でない➡既存品は薬価下げられる➡利益が出ない➡開発できない➡…
と負のスパイラルに陥ります。
これから抜け出すためには
海外で稼げる&薬以外で稼げる能力が必要です。
日本だけだとかなり厳しいです!
参考までに21年度の大手国内製薬会社の
海外売上比率&研究開発費を紹介します。
企業名 | 海外売上 比率(%) |
研究開発費 (億円) |
武田薬品 | 81.5 | 4558 |
アステラス製薬 | 80 | 2245 |
エーザイ | 67.8 | 1503 |
住友ファーマ | 66.2 | 1327 |
塩野義製薬 | 64.4 | 542 |
大塚HD | 56.8 | 2168 |
協和キリン | 54 | 523 |
中外製薬 | 47.8 | 1179 |
第一三共 | 46.6 | 2274 |
参天製薬 | 34.8 | 241 |
小野薬品工業 | 33 | 624 |
田辺三菱製薬 | 17.5 | 726 |
※各社発表資料より作成
ちょっと驚く数字ではありませんか?
上位は8割が海外の売り上げなんです。
すでに大手は国内を縮小し海外で稼ぐ体制に移っています。
就活で企業研究をする際には
- 海外販路を有しているか?
- 研究開発費は潤沢に有しているか?
という視点をもって、採用担当者には
今後の海外販路拡大の展望についても質問してみてください。
なお定期的に新薬を世に送り出すには
年間2000億円の研究開発費が必要だと言われています。
海外の企業と提携していない場合、開発費の大きさは
今後の新薬を売ることができる数に直結します。
これらを企業比較をするポイントに加えてみてください。
余談:国内製薬が危ないなら外資に行けばいいじゃない
国内製薬が危ないなら外資にいけばいいじゃない!!
この感想はもっともなのですが、一概に手放しで進められるか?というと
そういうわけでもありません。
ここで冒頭で紹介した国内市場が魅力的でないという話に直結します。
このまま国内の魅力が落ち続ければ
日本撤退!!!
という可能性もでてきますし、
最悪そこまでいかなくても
海外発売、日本未発売!
(まさにドラックラグですね…)
という状況は十二分に考えられます。
外資製薬を受ける場合は
日本市場に継続的に投資する意思を表明しているのか?否か?
というのは重要なポイントでしょう。
まとめ
他国はどうなの?
実際、医薬品市場の魅力はへっているの⁇
そんな環境での企業選びのポイントは?
国内環境…厳しいですよね!!!
ということで医薬品化粧産業労働組合(薬粧連合)という組織を作り
組織内議員を政界に送り出し対応しよう!!!という試みが行われ
- 価格乖離の大きな品目が対象となるはずの中間年改定の見直しと廃止の検討
- 品質確保、安定供給の持続のための調整幅の維持・拡大
- 経済安全保障推進法による「重要物資」である医薬品のサプライチェーン強化を推進と薬価制度による下支え強化
- 「イノベーションの推進」と「国民皆保険制度の持続性」を両立するための高齢者医療制度の負担能力に応じた見直しの継続
- セルフケア・セルフメディケーションの推進
という要望が厚生労働大臣あてに提出されています。
最初に述べた不安の解消だけでなく
このような身近な活動が実を結ぶにためも
皆様の認識強化のために本記事がお役に立ちますと幸いです。
YouTube撮影もしているので
よければご参照ください!