お疲れ様です。ハンバーガー&コカコーラ&フライドポテトの組み合わせがやめられないチクチクです。
最近新型コロナウイルス関連で明るいニュースが続いていますね。
特にファイザーとビオンテックのbnt162b2(以下ファイザーワクチン)とモデルナのmRNA-1273(以下モデルナワクチン)は両方とも高い有効性で非常に期待がもたれています。
ミクスオンラインにも期待する文面がたくさん載っていまして
モデルナワクチン
臨床第3相試験「COVE」では、2回のワクチン投与から2週間後に新型コロナウイル感染症と確定診断を受けた95例を対象とした中間解析を実施した。その結果、コロナに感染していたのはプラセボ群90例に対し、mRNA-1273群では5例で、有効性は94.5%で、統計学的有意差を示したという(p<0.0001)。
副次評価項目として、新型コロナ感染例のうち、重症例を解析したところ、重症だった11例すぺてがプラセボ群で、mRNA-1273群では発生しなかったという。
報告された有害事象は、ワクチンの1回目接種後は注射部位反応(2.7%)、2回目の接種後は倦怠感(9.7%)、筋肉痛(8.9%)、関節痛(5.2%)、頭痛(4.5%)、痛み(4.1%)、注射部位の紅斑/発赤(2.0%)などとしている。重篤な安全性の懸念は認められなかったとしている。
ファイザーワクチン
臨床第3相試験は、今年7月27日に開始した。プラセボ群とワクチン候補群に分けて、安全性、免疫応答、有効性についての検証を進める。主要評価項目は、ワクチン接種前に新型コロナに感染していない参加者に対する予防と、過去の感染の有無によらないCOVID-19の予防を据えた。米国をはじめ、世界から4万3538人が登録され、このうち3万8955人がワクチン候補の2回目の接種を受けている(11月8日時点)。
FDAとの話し合いを踏まえ、独立モニタリング委員会は11月8日、新型コロナの感染が確認された94例を対象に中間解析を実施。ワクチン接種した群では90%超の予防効果を示したとしている。また、ワクチンの投与スケジュールから、ワクチンの接種開始から28日後まで予防効果が維持されていることを意味するとしている。
引用:ミクスオンライン:米ファイザー 新型コロナワクチン候補に9割超の予防効果を中間解析で確認 11月中にもFDAに申請へ
両ワクチンの作用機序等は過去記事でとりあげていますので、詳しく確認したい方はそちらをご参照ください。
https://www.mr-net.info/entry/mrna-1273
https://www.mr-net.info/entry/bnt162
ぱっと見両方とも非常に良い効果っぽいんですが、ただこうなってくると、
「モデルナとファイザー結局どっちがいいんだ?」
今回はこの疑問に答えていきます。
患者背景が違うので比べるのはナンセンス
早速ぶっ壊し結論ですが、現状で有効性、安全性を比較するのはナンセンスです。
全くもって意味がありません!!はい、おしまい!!!
当たり前といえば当たり前の話なんですけれども、二つの薬剤の試験は別々に実施されています。
そのため、使われている対象がてんでバラバラです。
基本的に薬剤を比較する際には、患者背景を調節した直接比較試験以外は使うべきではありません。
ちょっとわかりにくいので、具体例をあげます。
20歳の患者200人と80歳の患者200人に同じ薬を使った場合の結果って変わりますよね?
20歳の方が基本的に体力があるので、健康面を観測すれば多くの場合いい結果を出すでしょう。
注目してもらいたいのは患者背景次第では同じ薬でも結果が変わると言うことです。
全く別の薬ならば、患者背景にブレがあればさらに異なるでしょう!!
実際それぞれのワクチンの投与者の背景を調べると
・43538人
・米国をはじめ世界から症例エントリー
・健康な12歳以上の男女
・ライフスタイルの制限が遵守できる
・調査員判断で感染リスクが高い
・30000人(65歳以上7000人、65歳未満の高リスク患者5000、重度の肥満と心臓病は全体の42%、有色人種は11000人)
・18歳以上のアメリカ人
・重度の肥満と心臓病は全体の42%
・有色人種は11000人(全体の約3割)
よくよく見てみると
- 人種は世界中からエントリーされているファイザーワクチンと有色人種含むアメリカ人で構成されているモデルナワクチン
- 年齢は18歳以上と12歳以上と明らかにバラバラです。
ファイザーワクチンの詳細が発表されていないため細かい点はわかりませんが、(11/22発表予定)
対象年齢だけを見てみても12歳以上の小児含むファイザー対18歳以上のモデルナ
これを比べることがどれほど愚かか、わかっていただけたかと思います。
それでもあえて差別化するなら
比べるなんてナンセンスだ!!とは言ったものの、それでも比べたいのが人間ですよね?
なので有効性安全性以外の部分で差別化できるポイントをいくつか探してみました。
ポイントはいか4点です。
- 日本人で治験を行っているか否か
- 試験対象年齢
- 貯法&流通
- 物量(手に入りやすさ)
日本人で治験を行っているか否か
これ結構大事だと思っています。
有効性や安全性の人種差って医薬品では普通にあるんです。
身近なところだとアルコールです。
白人の多くはアルコールを分解する力が日本人よりも明らかに強いです。
そのため酔いにくくなっています。
アルコールの薬理作用を酔わせることと考えた場合、白人には効きにくい訳です。
このように多くの薬が人種差の影響を多かれ少なかれ受けています。
全く影響がないものの多いですが、それでも
日本人のデータがしっかりあるのとないのでは安心感が違います。
20~85歳の日本人160名を3:1の割合でワクチンとプラセボに割付けて安全性、忍容性および免疫原性の評価をしています。
ワクチンの副反応には重篤なモノが超低頻度で増加する場合もあります。
なので160例と言う症例数は正直物足りませんが、全くないのよりは全然いいです。
対してモデルナワクチンは対象がアメリカ人と書いてあるとおり、日本では治験を行っていません。
結構調べてみましたが日本人に使っていると言う記載も見つけることができませんでした。
ファイザーワクチン>モデルナワクチン
対象年齢
続いて年齢です。これは患者背景で少し触れましたね。
治験時の組み入れ年齢は
- ファイザー12歳以上
- モデルナ18歳以上
となっています。
つまり。12歳以上18歳未満のデータはファイザーワクチンのみが持っています。
一般に小児は薬物動態が成人とは異なります。(小児は7歳以上15歳未満)つまり別の人種と考えることもできます。
前項で紹介した通り、別人種ではちゃんとデータをとることが重要です。
12歳以上とはいえ小児期間のデータを有している点はかなり大きなポイントです。
ファイザーワクチン>モデルナワクチン
貯法&流通
これは結構メディアでも触れられていますね。
- ファイザーワクチン:‐70℃保管、通常の冷蔵庫(2-8℃)では5日間保存が可能
- モデルナワクチン:-20℃保管、通常の冷蔵庫(2-8℃)では1ヶ月安定して保存が可能
−70℃に保って広範囲に流通させるのはかなりの労力がいりますし、通常の冷蔵庫で5日しか持たないのでは専用の設備がないと保存はかなり厳しいようには感じますね。
ファイザーワクチン<モデルナワクチン
物量(手に入りやすさ)
最後に物量です。
日本国内のモデルナワクチンは武田薬品が販売します。
製造販売承認取得後に5000万回接種分を2021年前半から日本国内で供給することを予定となっていますので、2回打つことを考えると2500万人分でしょうか。
ファイザーワクチンは当然ファイザーが販売しますよね。
1億2000万回分のワクチンを2021年上半期に日本に供給することを日本政府と合意したを発表していますので、6000万人分でしょうか。
ファイザーワクチン>モデルナワクチン
まとめとあとがき
簡単にまとめさせていただきますと
・日本人エビデンス、12歳〜18歳のエビデンス、物量の3点はファイザーワクチンが有利
・貯法とそれに関連した流通はモデルナワクチンが有利
日本人のデータが多い方が大量に流通する訳なんで、一般消費者の立場からすると歓迎するべき内容かもしれません。
ただ流通させたり、保管したりという業務の人にとってはかなり忙しくなる要因となりそうですね。