当ブログではCRISPRテクノロジーに関連する記事を何度か紹介しています。
※当ブログのCRISP関連記事一覧
実は最近医療の現場にも
CRISPRテクノロジーを応用した
検査方法が広がってきています。
その代表がSHERLOCKとDETECTRです。
まとめてCRISPR検査って呼ばれたりします。
そのうちのSHERLOCKは
新型コロナ診断キットとして既に使われています。
米Sherlock Biosciences社が製造し販売している
「CRISPR SARS-CoV-2キット」がそれです。
「CRISPR SARS-CoV-2キット」は実は2020年5月
米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得ています。
近い将来SHERLOCKとDETECTRが日本にも上陸した時のために、
今回は簡単なメカニズムを紹介します。
本記事では
- SHERLOCKとDETECTRの由来と開発者
- Cas12、13の特徴
- SHERLOCKとDETECTRのメカニズム
- CRISPR検査のメリット
上記4点をまとめて紹介します。
SHERLOCKとDETECTRの由来
某漫画の○月のオッサンも言ってました!!
SHERLOCKとDETECTRの由来
SHERLOCKは
Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter UnLOCKing
特異的な高感度酵素レポーターのロック解除
DETECTRは
DNA Endonuclease Targeted CRISPR Trans Reporter
DNAエンドヌクレアーゼを標的としたCRISPRトランスレポーター
特異的な高感度酵素=DNAエンドヌクレアーゼ=Cas酵素です。
Casって何?って人は過去記事をご参照ください。
【過去記事】CRISPR-Cas9【基本編】
さらに両方にレポーターと言う単語が出てきている様に、
この核酸検出技術はレポーターとCasが鍵を握っています。
両方ともCasとレポーターを使った技術ってことでOKです。
補足として開発元を紹介すると
SHERLOCKは
James J. CollinsとFeng Zhangが開発し
スタートアップのSherlock Biosciencesが
研究を続けている技術で
DETECTRは
J. Doudnaが開発し
スタートアップのMammoth Biosciencesが
研究を続けている技術です。
それにしても名前が両方とも秀逸です。
シャーロックはかの有名な名探偵
ディテクターは英語で検出器
名探偵や検出器の様にターゲット核酸を探しだし
知らせるシステムって願いが込められまくっています。
余談ですが、
CRISPR検査は他にもいくつか開発されていて、
我が国、日本でも開発されています。
そしてその名はCONAN(コナン)!!
アニメ大国日本ですから、
死神と揶揄されているメガネに違いないでしょう。
Cas12、13の特徴
Cas12と13は標的とする核酸が違います。
Cas12のターゲットはDNA Cas13のターゲットはRNA
この違いは何に対抗するために生み出されたかと言う違いでして、
DNAウイルスに対抗するために進化した方がCas12
RNAウイルスに対抗するために進化した方がCas13
CasってDNA破壊系が多いので13は
ファミリーの中では少々変わり者です。
なお正確には13aとか12aとか表記しますが、
今回は概要なので割愛します。
12、13の両Casはターゲットを速やかに認識し破壊します。
ターゲットは違いますが、この二つの酵素には共通した特徴があります。
その特徴がターゲット破壊と同時に一本鎖DNA(ssDNA)
ないしssRNAをコラテラル切断すると言う特徴です。
ssDNAやssRNAの配列は関係ありません。
近くにいるだけで巻き込んで破壊します。
余談ですが、
ヒト細胞内のDNAはほとんど二重螺旋構造をとっていることから、
ヒトゲノム編集に与える影響は限定的と考えられています。
SHERLOCKとDETECTRのメカニズム
SHERLOCKとDETECTRは、
このコラテラル切断を応用します。
応用のためにここで登場するのが前述のレポーターです。
レポーター
レポーターは
ssDNAまたはssRNAを改造して作られます。
具体的には切断とされることで
発光したり色を変えたりする改造が行われます。
つまりレポーターがコラテラル切断されると、
レポーターが含まれる試薬の色が変わったり光ったりする様になります。
SHERLOCKでは、
消光状態の蛍光ssRNAレポーターを
Cas13のコラテラル切断の対象として使い
DETECTRでは、
消光状態の蛍光ssDNAレポーターを
Cas12のコラテラル切断対象として使います。
ターゲットを見つけたCasは
速やかにターゲットを破壊します。
と同時にレポーターも破壊します。
すると切断されたレポーターは発光し、
ターゲットの存在を知らせると言う過程をとります。
なお試験紙でもわかる様に改良されたSHERLOCKv2もあります。
この動画をみてもらえるとより理解が進むと思います。
CRISPR検査の3つのメリット
DETECTRの開発者でCRISPRの開発者である
ダウドナ教授によるとCasを用いた検査には
3つのメリットがあると紹介しています。
- 検出が直接的である
- 変更が簡単なこと
- 他のテストと同じ材料で製造する必要がない
一つ目の検出の直接性ですが、
抗体検査と異なり「直接的な」方法だってことです。
核酸を直接検出するのがCRISPR 検査なので、
感染の間接的な証拠である酵素とタンパク質に依存しません。
つまりウイルスが二次的な証拠を生成し
始める前では検査できないと言う問題がおこらないと言えます。
抗体検査だと抗体獲得を待つ必要が有りますが、
その必要がないってことですね。
二つ目の変更が簡単ってどう言うことかと言うと
CRISPR−CasシステムはガイドRNAを組み換えるだけで
ターゲットを変えることができます。
なので新型コロナや他のウイルスが変異しても、
それにわせて迅速にキットを作り替えることができます。
最後に他のテストと同じ材料で
製造する必要がないと言う点についてです。
CRISPR-Casはタンパク質と核酸で構成されています。
他の検査の材料と全く違うもので出来ています。
パンデミック下で他の検査と
同じ材料の検査をさらに作ろうとすると材料が足りなくなり、
世界に十分量を流通させられなくなる可能性が有りますが、
そう言った心配がありません。
大量に作っても材料切れにならないのは
世界的なパンデミックでは大きなメリットになります。
あとがき
実はSHERLOCKって新型コロナ対策として期待されている技術だし、
利権でノーベル賞が取れていないCRISPR技術使っているし、
話題性と言う意味でノーベル賞取らないかなーって思ってこの記事書いています。
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参考
- New CRISPR tool can detect tiny amounts of viruses
- Jennifer Doudna sees CRISPR gene-editing tech as a Swiss Army knife for COVID-19 and beyond
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